書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

◇猿

『サル化する社会』内田樹|専門分野は独立しているわけではなく全てに繋がっている

『サル化する社会』内田樹 文藝春秋[文春文庫] 2023.6.6読了 内田樹さんが「なんだかよくわからないまえがき」と題している前書きで、今の日本社会では「身のほどを知れ、分際をわきまえろ」という圧力が行き渡りすぎていると言っている。身の程を知れ、と…

『ゴリラ裁判の日』須藤古都離|人間と動物の違い、人権とは何か

『ゴリラ裁判の日』須藤古都離 講談社 2023.4.5読了 去年のメフィスト賞受賞作。講談社が主催するメフィスト賞はちょっと変わった風合いというか、わりあい突飛な作品が選ばれるイメージがある。エンタメ寄りで通が好みそうな感じ。私が手に取ったのはこの賞…

『ゴリラの森、言葉の海』山極寿一 小川洋子|因果という考えを持たないゴリラ

『ゴリラの森、言葉の海』山極寿一 小川洋子 新潮文庫 2021.11.16読了 霊長類学者の山極寿一(やまぎわじゅいち)さんと、小説家小川洋子さんの対談集である。なんと、ゴリラにまつわるもの。猿好きとしてはもちろんたまらない。山極先生は、ゴリラ研究の第…

『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール/地球規模で考えよう

『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール 柴田裕之/訳 紀伊国屋書店 2020.11.25読了 情動は感情とは別物であると著者は言う。「感情」は内面の主観的状態であり、自分の感情については言葉で伝え合う。一方、「情…

『一人称単数』村上春樹/やわらかく心地よい作品たち

『一人称単数』村上春樹 文藝春秋 2020.8.23読了 おそらく今年の文芸誌部門でベストセラーになるのでは、と予測する人も多いだろう、先月刊行された村上春樹さんの6年ぶりの短編集だ。8つの短編が収録されている。表題作『一人称単数』だけが書き下ろしで他…

『MONKEY vol.20』柴田元幸責任編集/センスの良さが光る文芸誌

『MONKEY vol.20』柴田元幸責任編集 スイッチ・パブリッシング 2020.6.23読了 雑誌である。タイトルがMONKEYだが、別に猿に特化した読み物というわけではなく、柴田元幸さんが責任編集を務める文芸誌だ。「いい文学とは何か、人の心に残る言葉とは何か、その…

『ゴリラに学ぶ男らしさ 男は進化したのか?』山極寿一 / 人間の方が変わっているのかもしれない

『ゴリラに学ぶ男らしさ 男は進化したのか?』山極寿一 ちくま文庫 2019.11.5読了 ゴリラ研究の世界的権威、山極寿一先生の著作である。タイトルに「男らしさ」とあるが、ジェンダーレスが叫ばれている現代には、相応しくないのでは?なかなか挑戦するな〜、…