書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

◇歴史書・時代物

『フランス革命の女たち 激動の時代を生きた11人の物語』池田理代子|ベルばらを読みたくなってきた

『フランス革命の女たち 激動の時代を生きた11人の物語』池田理代子 新潮社[新潮文庫] 2024.03.04読了 子供の頃大好きだった漫画の一つが『ベルサイユのばら』である。女子はたいていハマっていた。文庫本の表紙にある、奮い立つオスカルとそれを守ろうと…

『無暁の鈴』西條奈加|転落した人生のその先にあるものは

『無暁の鈴(むぎょうのりん)』西條奈加 光文社[光文社文庫] 2024.01.10読了 主人公の数奇な運命、転落していく物語は確かに読者を魅了し熱狂させる。人の不幸を嘲笑いたいわけでも、自分のほうがマシだと安心したいわけでもないと思う。この先、彼がどう…

『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子|完成された物語性

『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子 新潮社 2023.7.31読了 胸のドン突きにあるもの。胸の奥深くの突き当たりにあって自分の意志じゃどうにもならないもの。これに反する気持ちを抱こうとしても、何かが喉に引っかかったような、もどかしい気持ちになりすっきり…

『HHhHープラハ、1942年』ローラン・ビネ|ビネ自身が主人公で、実況中継するかのよう

『HHhHープラハ、1942年』ローラン・ビネ 高橋啓/訳 東京創元社[創元文芸文庫] 2023.6.17読了 本屋大賞翻訳小説部門を受賞したというのが納得できるおもしろさだった。パラパラと頁をめくると、細かい文字がびっしりと埋められ(東京創元社の文庫だし…

『しろがねの葉』千早茜|何を光として生きていくのか|銀世界を肌で感じ取る

『しろがねの葉』千早茜 ★★ 新潮社 2023.2.4読了 千早茜さんの小説は過去に1冊だけ読んだことがある。女性ならではの細やかな表現が際立ち、何よりもとても読みやすかった。しかし他の作品をなかなか手にする機会がなく。今回読んだのは、ずばり直木賞受賞作…

『黒牢城』米澤穂信|大河ミステリー、ここにあり

『黒牢城』米澤穂信 KADOKAWA 2022.4.25読了 第166回直木賞受賞、他にも4大ミステリランキングを制覇した大作である。米澤穂信さんの作品は数冊読んだことがあるが、そもそも現代モノ専門の作家だと思っていたから、歴史モノを書いたということに驚いていた…

『物語 ウクライナの歴史』黒川祐次|ヨーロッパの中心にあるウクライナ

『物語 ウクライナの歴史』黒川祐次 中央公論新社[中公新書] 2022.4.4読了 ロシアがウクライナ侵攻を始めてからもうすぐ1か月になる。日本からは遠い地の出来事で、できることは何もないかもしれないが、何が起きているかを知ることは出来る。私たちは目を…

『邯鄲の島遙かなり』貫井徳郎|イチマツ痣は永遠なり、日本に希望を

『邯鄲(かんたん)の島遙かなり』上中下 貫井徳郎 ★ 新潮社 2021.12.27読了 今年の9月から3ヶ月連続で刊行された貫井徳郎さん最大の長編小説で、執筆人生の記念碑的作品である。単行本で全3巻ととても長いのだが、読み始めると物語にガツンとのめり込み、と…

『雲上雲下』朝井まかて|古くから伝わる民話の復興を

『雲上雲下(うんじょううんげ)』朝井まかて 徳間文庫 2021.11.13読了 子供の頃にテレビで観た「まんが日本昔ばなし」を思い出した。必ずあのテーマ曲とセットだ。「ぼうや~ 良い子だ ねんねしな」という歌声とともに、竜に乗った男の子が画面いっぱいにな…

『吉野葛・盲目物語』谷崎潤一郎|中期の名作をどうぞ

『吉野葛・盲目物語』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.7.9読了 谷崎さんの中期の2作品が収められている。古き良き古風な日本語の文体で、一見とっきにくいのに滑らかで麗しい。2作品ともタイトルだけは知っていたが、内容は想像とかなり違っていた。 『吉野葛』 か…

『孔丘』宮城谷昌光/教えることは学ぶこと

『孔丘』宮城谷昌光 文藝春秋 2020.11.18読了 春秋時代の中国の思想家であり、儒教の始祖とされる孔子。孔子による思想がのちに弟子たちによって『論語』にまとめられた。この本で「孔子」ではなく「孔丘」となっているのは、著者の宮城谷さんが人間である彼…

『信長の原理』垣根涼介/法則にとらわれ続ける

『信長の原理』上下 垣根涼介 角川文庫 2020.11.5読了 垣根さんの小説は、文学賞三冠に輝いた『ワイルド・ソウル』しか読んだことがない。それもかなり前で、おもしろかった記憶はあるものの内容はほとんど憶えていない。最近の垣根さんは歴史小説を書くこと…

『童の神』今村翔吾/エンタメ全開の歴史小説

『童の神』今村翔吾 ハルキ文庫 2020.10.2読了 第163回直木賞は馳星周さんの『少年と犬』が受賞となったが、有力候補と言われていたのは今村翔吾さんの『じんかん』である。選考当時からこの『じんかん』気になっていたのだが、読んだことのない作家さんだか…

『現代語古事記』竹田恒泰/日本最古の歴史書は、特に神の代(神話)がおもしろい

『現代語古事記 ポケット版』竹田恒泰 学研 2019.12.14読了 美容院では、いつも雑誌は読まずに本を持参する。最近そういう人は少ないようで、昔通っていたサロンの美容師さんに言われた。その時に本の話になり、その方に薦めてもらったのが、『古事記』だっ…