書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(さ行の作家)-白石一文

『神秘』白石一文|自分を労わること、原因を突き止めること|記憶とは感覚による部分が大きい

『神秘』上下 白石一文 毎日新聞出版[毎日文庫] 2023.10.24読了 読んだことがあるという予感があったが、それでもいいやと思い手に取った。再読も辞さないと思える白石一文さんの作品だから。特に私は昔の作品が好きである。とはいえ、この小説は2014年に…

『松雪先生は空を飛んだ』白石一文|みんな平等っぽくうまい具合にできている

『松雪先生は空を飛んだ』上下 白石一文 KADOKAWA 2023.2.13読了 白石一文さんの最新刊、ソフトカバーで上下巻。白石さんにしてはかなりのエンタメ寄りで、路線変更したのかなと思うほど軽やかで、今までの長編の中でダントツに読みやすい。 銚子太郎が新入…

『君がいないと小説は書けない』白石一文|自己分析を突き止めた到達点がある

『君がいないと小説は書けない』白石一文 新潮社[新潮文庫] 2022.9.13読了 敬愛する作家の一人、白石一文さんの自伝的小説を読んだ。単行本刊行時から気になっていたが、確かあの時はほぼ同時に刊行された島田雅彦さんの作品(これも自伝的小説)を手に取…

『道』白石一文|あの時、ああしていれば

『道』白石一文 小学館 2022.7.23読了 白石一文さんの小説は、年々柔らかくなってきているような気がする。昔の作品は切れ味鋭く、読むたびに感情を揺さぶられた記憶があるのだが、今はゆったりとした心持ちで読める。それはそれで悪くないと思うのは自分も…

『プラスチックの祈り』 白石一文 / 本当であるかを決めるのは自分

『プラスチックの祈り』 白石一文 朝日新聞出版 2019.4.6 読了 全盛期の白石さんの作品にはとうていお目に掛かれないだろう、とわかってはいるのに手にしてしまう。ストーリーも読み終えた時の感覚も予想ができるのに読んでしまうのは、自分自身が白石さんの…

『光のない海』 白石一文 / 作中の舞台を感じたい

『光のない海』 白石一文 集英社文庫 2019.2.6読了 白石さんは作中の舞台である地域を表現することがすこぶる上手だと思う。目に見える風景だけでなく、その地域ならではの料理であったり、そこに住む人達であったり。おそらく、小説を書く前に、自分でその…