2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧
『熊の敷石』堀江敏幸 講談社文庫 2021.12.28読了 表題作と他に2作の短編が収められている。『熊の敷石』で堀江敏幸さんは2001年に芥川賞を受賞された。いかにも芥川賞らしい作品であると思う。ちょっと小難しく、華美に修飾された言葉と比喩で飾られた文章…
『邯鄲(かんたん)の島遙かなり』上中下 貫井徳郎 ★ 新潮社 2021.12.27読了 今年の9月から3ヶ月連続で刊行された貫井徳郎さん最大の長編小説で、執筆人生の記念碑的作品である。単行本で全3巻ととても長いのだが、読み始めると物語にガツンとのめり込み、と…
『ポトスライムの舟』津村記久子 講談社文庫 2021.12.19読了 表題作と『十二月の窓辺』という2作の中編小説が収められている。『ポトスライムの舟』は、2009年に第140回芥川賞を受賞。先日、今度の芥川賞と直木賞の候補作が発表されていたが、年に2回もある…
『感情教育』上下 ギュスターヴ・フローベール 太田浩一/訳 光文社古典新訳文庫 2021.12.18読了 昔、フローベールの『ボヴァリー夫人』を読んだときに、実はそんなにおもしろいと感じなかったので彼の作品はあまり積極的に読もうという気がおきなかった。そ…
『いつか深い穴に落ちるまで』山野辺太郎 河出書房新社 2021.12.14読了 先日、テレビ番組「アメトーーク」で読書芸人が放映されているのを観た。読書芸人はなんと4年ぶりだというから驚いた。それよりも、その回にゲストで登場していたのがカズレーザーさん…
『消失の惑星(ほし)』ジュリア・フィリップス 井上里/訳 早川書房 2021.12.13読了 ロシアの南端にあるカムチャツカ半島。モスクワから約7,000kmも離れたこの地域は、自然が多く残り、人口も僅か、そして人が住んでいる地域は限られている。この島のことは…
『ふがいない僕は空を見た』窪美澄 ★ 新潮文庫 2021.12.11読了 おそらく窪美澄さんの名前を世間に広めたのはこの作品だと思う。2010年に、収録作「ミクマリ」でR-18文学賞、そして「ミクマリ」も含めたこの『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞を受賞、…
『昭和の名短篇』荒川洋治編 中公文庫 2021.12.11読了 昭和の文豪14人の短篇が収められた中公文庫オリジナルの短編集が先日刊行された。名だたる作家ぞろいなのだろうが、半分くらいしか知らなかった。 印象に残った作品は下記の3つだ。 『萩のもんかきや』…
『神曲』川村元気 新潮社 2021.12.9読了 私はダンテの『神曲』を読んだことがない。いつかは読みたいと思っているイタリアの叙事詩だが、いかんせん難しそうでまだ手を出せないでいる。読んでなくても、きっとこの作品は問題ないだろうと思い手に取ってみた…
『たそがれてゆく子さん』伊藤比呂美 中公文庫 2021.12.8読了 書店に『ショローの女』という本が新刊で積み上げられているのを目にした。ショローって、初老だよなぁ。初老は、今はだいたい50〜60歳くらいを指すようだが、平均寿命がまだ低かった昔は40歳を…
『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー 井上里/訳 創元推理文庫 2021.12.7読了 終始不穏な空気をまとっている作品だった。この先何が起こるのかわからないぞくぞくした緊迫感で、小説としてとてもおもしろく読めた。いわゆるミステリ…
『夏の終り』瀬戸内寂聴 新潮文庫 2021.12.5読了 寂聴さんの恋愛実体験を元にして書かれた私小説で、女流文学賞を受賞した『夏の終り』。この短編を含めたいくつかの作品が収められている連作短編集である。私が生まれたときには寂聴さんは既に仏門に入り尼…
『ベルリン3部作』クラウス・コルドン 酒寄進一/訳 岩波少年文庫 2021.12.3読了 ずっと読みたかったコルドンさんの『ベルリン3部作』を読んだ。これは児童文学のカテゴリーで岩波少年文庫から刊行されている。侮ることなかれ、名作の多い岩波少年文庫、や…