書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(た行の作家)-辻邦生

『眞晝の海への旅』辻邦生/辻さんが書くとミステリーにならない

『眞晝(まひる)の海への旅』辻邦生 小学館P+D BOOKS 2019.12.1読了 大好きな辻さんの文章を味わいたくて手に取る。この作品は、元は新潮文庫にあったようだけれど、今はP+D BOOKSでしか刊行されていないようだ。紙質はいいとは言えないけ…

『春の戴冠』 辻邦生 / 花の都フィレンツェを思い浮かべながら

『春の戴冠』1〜4 辻邦生 中公文庫 2019.7.25読了 傴僂(せむし)のトマソが不気味なほどの存在感を発揮している。せむしという言葉は日本では差別用語として禁じられていると思うが、何故かせむしの人は小説においてキーとなる人物であることが多い。せむし男…

『西行花伝』 辻邦生 / 仙人になる

『西行花伝』 辻邦生 新潮文庫 2019.4.27読了 歌人であり仏教僧である西行について、弟子の藤原秋実が綴る壮大な絵巻。森羅万象—この小説のテーマであり、作中では「いきとしいけるもの」とルビが振られている。 森羅万象の仏性に触れるとは、地上に現れたす…

「背教者ユリアヌス」 辻 邦生 /至福の読書

「背教者ユリアヌス」(一)(二)(三)(四) 辻 邦生 ○ 中公文庫 2019.1.23読了 あぁ、辻邦生さんの本を何故今まで読まなかったのか、と悔やまれる…こんなにも美しい日本語を奏でられる人が今どのくらいいるだろう。 4世紀のローマ帝国を舞台にした、史実を元に…