国内(た行の作家)
『しろがねの葉』千早茜 ★★ 新潮社 2023.2.4読了 千早茜さんの小説は過去に1冊だけ読んだことがある。女性ならではの細やかな表現が際立ち、何よりもとても読みやすかった。しかし他の作品をなかなか手にする機会がなく。今回読んだのは、ずばり直木賞受賞作…
『完全犯罪の恋』田中慎弥 講談社[講談社文庫] 2022.12.17読了 私は田中慎弥さんの書くものが好きだが、同時に彼自身にもとても興味をそそられる。私生活はどんな風だろう、どんな人を恋愛対象にするんだろう。彼の思考と文章があれば好みの女性を一発で落…
『銀花の蔵』遠田潤子 新潮社[新潮文庫] 2022.12.4読了 海外小説が大好きなのに、時々疲れてしまうことがある。おそらく翻訳された文章に気疲れするのだろう。現代は優れた邦訳がとても多く、そのおかげで私たちは素晴らしい世界文学に触れることができる…
『デッドライン』千葉雅也 新潮社[新潮文庫] 2022.11.21読了 千葉雅也さんは立命館大学の教授をされており『現代思想入門』の著者で知られる哲学者である。哲学者が書いた小説、しかも芥川賞候補にもなっていたので、かねてから気になっていた作家である。…
『水平線』滝口悠生 ★★ 新潮社 2022.8.25読了 あの人と私は、海の彼方でつながってルルル 帯に書かれたこの文章。ルルル?ルルルって…。ハミングしてるのだろうか。この感じが早くも滝口悠生さんっぽい。霊的な力を持つという巫女さんから、名前がよくないと…
『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 講談社 2022.7.30読了 とても評判が良かったから芥川賞候補に挙がる前から購入していたのに、ついつい読むのが遅くなってしまった。先日第167回芥川賞を受賞された作品。発表前に読みたかったけれど、まぁ特…
『現代生活独習ノート』津村記久子 講談社 2022.6.16読了 去年の11月に刊行された津村記久子さんの短編集を読んだ。過去に文芸誌に掲載された8つの作品が収められている。タイトルに「生活独習」とあるように、なんらかの物事を独りで学習するようなストーリ…
『高架線』滝口悠生 ★ 講談社[講談社文庫] 2022.6.7読了 次の入居者を自分で見つけることが賃貸に住む条件というのはなかなかおもろい。不動産屋を通さずに済むから、貸主も借主も余計な手数料がかからず、その分家賃が破格なのだ。まぁ、契約書やら重要事…
『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子 朝日新聞出版[朝日文庫] 2022.2.18読了 私はサッカーよりも野球のほうが好きだ。普段Jリーグも海外リーグも高校サッカーの試合も観ない。ワールドカップだけは、テレビに張り付いて観るという「にわか」だ。ラグビ…
『まほり』上下 高田大介 角川文庫 2022.1.30読了 初めて読む作家の本である。名前も知らなかったのだが、どなたかがこの本をTwitterにあげていて気になり購入。どうやら民俗学をテーマにした作品のようだ。著者の高田大介さんは、小説を書く傍ら、対象言語…
『まともな家の子供はいない』津村記久子 ちくま文庫 2022.1.14読了 去年の後半は津村記久子さんの作品を結構読んだが、今年はこの本から。表題作ともうひとつ『サバイブ』という短編が収められている。 『まともな家の子供はいない』 津村さんの作品にして…
『改良』遠野遥 河出文庫 2022.1.13読了 遠野遥さんが『破局』で第163回芥川賞を受賞されたとき、何より驚いたのは、遠野さんがロックバンドBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司さんの息子であるということだった。すらりとした体躯に端正な顔立ちだなとは思ってい…
『ポトスライムの舟』津村記久子 講談社文庫 2021.12.19読了 表題作と『十二月の窓辺』という2作の中編小説が収められている。『ポトスライムの舟』は、2009年に第140回芥川賞を受賞。先日、今度の芥川賞と直木賞の候補作が発表されていたが、年に2回もある…
『アレグリアとは仕事はできない』津村記久子 ちくま文庫 2021.11.1読了 てっきり同僚の女子社員のことだと思っていたら、このアレグリアって複合機だったのか…。地質調査会社で働く事務員のミノベは、高機能と謳われた複合機と格闘する。1分間機能を果たし…
『作家は時代の神経である コロナ禍のクロニクル2020→2021』髙村薫 毎日新聞出版 2021.10.23読了 新型コロナウィルスの新規感染者が急激に減り、このまま第6波も来ないで完全に収束して欲しい。国民の誰もがそう期待し、私たちの生活は実際にコロナ禍以前の…
『長い一日』滝口悠生 ★ 講談社 2021.10.12読了 これは私小説になるのだろうか。日記のようなエッセイのような。語り手が個人事業主、青山七恵さんや柴崎友香さんが登場、極め付けは滝口さんと呼ばれている箇所を読んだこと。いや、これはもう滝口悠生さん本…
『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子 ★ ちくま文庫 2021.9.20読了 なかなか良いタイトルである。本谷有希子さんの作品にありそう。「そいつら」というのが特にいい。津村さんの小説はタイトルのセンスがひときわ抜きん出ていて、読む前から気になり手…
『死んでいない者』滝口悠生 文春文庫 2021.8.10読了 滝口悠生さんの芥川賞受賞作である。少し前に『茄子の輝き』を読んで、なかなか好みの文体だったため手に取ってみた。お通夜、告別式の話なので先日読んだ『葬儀の日』を連想した。 honzaru.hatenablog.c…
『吉野葛・盲目物語』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.7.9読了 谷崎さんの中期の2作品が収められている。古き良き古風な日本語の文体で、一見とっきにくいのに滑らかで麗しい。2作品ともタイトルだけは知っていたが、内容は想像とかなり違っていた。 『吉野葛』 か…
『世界はゴ冗談』筒井康隆 新潮文庫 2021.6.26読了 表題作を含めた10作品が収められた短編集である。筒井康隆さんの作品を読むのは久しぶりだ。そして彼の短編というのも初めてだ。いや〜、奇想天外なストーリーづくしでたまげる。一話めから、タイトルから…
『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子 双葉社 2021.6.16読了 日本のほとんどの地域で、多くの家の集まりがある。それが密集すると一戸建てなら住宅地、マンションなら団地になる。去年読んだ柴崎友香さんの『千の扉』を思い出した。柴崎さんの作品は…
『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』高野秀行 集英社文庫 2021.5.26読了 ずっと前から高野秀行さんの本を読んでみたくてようやく手にしたのがこの本。書店には数多くの文庫本が並んでいた。1番分厚くて躊躇したけれ…
『邪宗門』上下 高橋和巳 河出文庫 2021.5.19読了 佐藤優さんが世界に誇る日本文学と謳っている高橋和巳さんの『邪宗門』を読んだ。高橋さんの作品は先日『非の器』を初めて読み、なかなか好みの作風であると感じた。ただ、読み応えがある故にどっしり重く結…
『茄子の輝き』滝口悠生 新潮社 2021.4.15読了 滝口悠生さんは、『死んでいない者』で2016年に第154回芥川賞を受賞された。受賞作は文庫になっているがまだ未読である。この『茄子の輝き』というタイトルに何故だか惹かれた。食材の中では主役級ではない茄子…
『陰翳礼讃・文章読本』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.3.28読了 谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』『文章読本』という2大随筆と、他に短い作品が3つ収録された随筆集である。どの作品も素晴らしい文章で散りばめられている。日本の文化と日本語の美しさが、これまた…
『悲の器』高橋和巳 河出文庫 2021.3.13読了 39歳で早逝された天才作家高橋和巳さんを皆さんご存知だろうか。私は今まで彼の作品を読んだことがなかった。そのことを悔やみつつも、今回読んで本当に良かった。この『悲の器』を読むと著者高橋さんのすごさが…
『小説伊勢物語 業平』髙樹のぶ子 日本経済新聞出版 2021.2.23読了 在原業平は歌人であるが、その美しい容姿から多くの女性を虜にした平安時代のプレイボーイというイメージがある。『伊勢物語』は在原業平が主人公と言われているが、それが本当かどうかも作…
『春琴抄』谷崎潤一郎 ★ 新潮文庫 2021.2.16読了 私は見逃してしまったが、NHKの番組『100分de名著』で島田雅彦さんが『春琴抄』を解説したらしい。谷崎さんの作品では5本の指に入るほど有名な作品だが私はいまに至るまで未読だった。 同じような出だしの小…
『あゝ、荒野』寺山修司 角川文庫 2021.1.24読了 寺山修司さんは類稀なる才能を持ち、演劇・映画・短編・詩・エッセイなど幅広く活動された方である。有名なのは『家出のすすめ』や『書を捨てよ、町へ出よう』だろうか。唯一の長編小説がこの『あゝ、荒野』…
『ガーデン』千早茜 文春文庫 2020.10.4読了 よく書店に並んでいるのは目にしていたが、千早茜さんの小説を読むのは初めてだ。なんとなく、イヤミス系なのかな?と思っていたけど、確か西洋菓子店とつく題名の作品もあったので、色々な作風があるのかなと。 …