書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

◇対談・書簡

『さびしさについて』植本一子 滝口悠生|いろんな感情を大切にしたい|滝口さんの思想がたまらんく好き、んで、植本さんのことも好きになった

『さびしさについて』植本一子 滝口悠生 ★ 筑摩書房[ちくま文庫] 2024.02.23読了 読んでいるあいだ、ずっと胸がいっぱいで、喜びと苦しさとが一緒くたになったような気持ちになった。儚いけれど心地の良い往復書簡だ。 滝口悠生さんの本だ!と嬉しくなって…

『あとは切手を、一枚貼るだけ』小川洋子 堀江敏幸|手紙の世界でひとつに繋がる

『あとは切手を、一枚貼るだけ』小川洋子 堀江敏幸 中央公論新社[中公文庫] 2022.10.26読了 手紙だけでやり取りをする男女の往復書簡小説である。小川洋子さんと堀江敏幸さんがそれぞれのパートを務めている。なんと、事前にストーリーを組み立てることも…

『ゴリラの森、言葉の海』山極寿一 小川洋子|因果という考えを持たないゴリラ

『ゴリラの森、言葉の海』山極寿一 小川洋子 新潮文庫 2021.11.16読了 霊長類学者の山極寿一(やまぎわじゅいち)さんと、小説家小川洋子さんの対談集である。なんと、ゴリラにまつわるもの。猿好きとしてはもちろんたまらない。山極先生は、ゴリラ研究の第…

『街場の天皇論』内田樹|天皇制について考えてみよう

『街場の天皇論』内田樹 文春文庫 2021.2.19読了 2016年8月、当時の天皇陛下が「おことば」を述べられた。著者の内田樹さんは、陛下の「おことば」は、日本人が天皇制について根源的に考えるための絶好の機会を提供してくれたものと感謝の気持ちを以て受け止…

『アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ/ローマ帝国はいかにして生まれたのか

『アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ 布施由紀子/訳 作品社 2021.1.9読了 ローマの古代史、紀元前1年にローマ帝国が地中海世界を支配した時代を描いた作品である。その後は平和な200年と言われる「パックス・ロマーナ」になる。私は結構な年齢になるま…

『十二人の手紙』井上ひさし/極上の漫才や落語を思わせる

『十二人の手紙』井上ひさし 中公文庫 2020.9.6読了 井上ひさしさんの本を読むたびに、なんて上手いんだろうといつも唸らさせる。ストーリーもさることながら、日本語一つ一つの言葉や文の技巧が際立ち、お手本となるような文章なのだ。まるで国語の教科書に…

『みみずくは黄昏に飛びたつ』川上未映子・村上春樹/小説は信用取引で成り立つ

『みみずくは黄昏に飛びたつ 川上未映子 訊く/村上春樹 語る』 川上未映子・村上春樹 新潮文庫 2019.12.10読了 村上春樹さんの小説のなかで、私の一番のお気に入りは、『騎士団長殺し』である。刊行されたのとほぼ同じくして、この対談集も単行本で書店に並…

『ゴッホの手紙』 上 エミル・ベルナール編 ・中下 J.vゴッホ-ボンゲル編 / 固い握手を送る

『ゴッホの手紙』上(ベルナール宛)エミル・ベルナール編 中下(テオドル宛)J.vゴッホ-ボンゲル編 硲 伊之助/訳 岩波文庫 2019.4.20読了 なんて素敵な表紙なんだろう。こんな本はブックカバーを着けずに持ち歩きたくなる。ゴッホの絵は、日本人にとっても…

『村上さんのところ』村上春樹 / 小説のかたち

『村上さんのところ』 村上春樹 新潮文庫 2019.1.26 読了 2015年1月~5月の期間限定サイトによる、村上春樹さんとのメールのやりとり。その中から選りすぐった473通が収録されている。 いつもながら村上さんの文章は心地よい。数日前にどっぷり浸かる小説を…