書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(あ行の作家)-赤松利市

『らんちう』赤松利市|人間の業をせせら笑いながら見つめているのだろう

『らんちう』赤松利市 双葉社[双葉文庫] 2022.7.2読了 らんちうとは、奇形の高級金魚「らんちゅう」のこと。なんと一匹200万円もするという。調べてみると、背びれがなく、ずんぐりとした身体を持つ赤い金魚だった。金魚というと、私はお祭りの屋台にある…

『ボダ子』赤松利市|こすい人間、でも気になる。これ、なんなん!

『ボダ子』赤松利市 新潮文庫 2022.2.3読了 ボーダーとは境界性人格障害と呼ばれる深刻な精神障害で、それは成長とともに軽快する障害だが、その一方で、成人までの自殺率が十パーセントを超えるという。(7頁) その、ボーダーだから『ボダ子』である。作品…

『鯖』赤松利市/目が光る

『鯖(さば)』赤松利市 徳間文庫 2020.7.31読了 赤松さんのデビュー作は中編『藻屑蟹』、続いて書いた長編は本作『鯖』であり、山本周五郎賞候補にも選ばれた。ジャケットの文字が強く主張している。ただ大きいのではなく、なんだかこちらを睨んでるように…

『アウターライズ』赤松利市/東北への強い想い

『アウターライズ』赤松利市 中央公論新社 2020.5.7読了 2か月ほど前に、赤松さんのデビュー作『藻屑蟹』を読みその筆致に圧倒されたので、新刊を思わず購入。どうやらこれも東日本大地震をテーマにした作品のようだ。赤松さん自らが原発の除染作業員の経験…

『藻屑蟹』赤松利市/モズクでなくてモクズ/ミステリと純文学の融合

『藻屑蟹(もくずがに)』赤松利市 ★ 徳間文庫 2020.3.21読了 気になっていた作家である。というのも、彼は「62歳、無職、住所不定」から鮮烈なる文壇デビューを果たしたからだ。この作品がデビュー作、そして徳間書店が主催する第一回大藪春彦新人賞を受賞…