書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『説得』ジェイン・オースティン|その時はそうするしかなかった決断

『説得』ジェイン・オースティン 廣野由美子/訳 ★★ 光文社[光文社古典新訳文庫] 2024.05.13読了 ジェイン・オースティンの小説って、同じようなテーマ(ずばり結婚)ばかりだし、ストーリーも動きが少ないのにどうしてこうもおもしろく読めるんだろう。個…

『羆嵐』吉村昭|クマによる被害がよくニュースになるこの頃

『羆嵐(くまあらし)』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.05.09読了 クマってぬいぐるみにすると一番かわいい動物だと思う。クマのプーさんを筆頭にして、ディズニーランドのダッフィー、ご当地ゆるキャラくまモン、映画のおやじ熊さんTed、テディベアなん…

『ザ・ロード アメリカ放浪記』ジャック・ロンドン|自由を求めて放浪しよう

『ザ・ロード アメリカ放浪記』ジャック・ロンドン 川本三郎/訳 筑摩書房[ちくま文庫]2024.05.07読了 ジャック・ロンドンが作家として成功したのは「若いころあちこち放浪していた時代に経験したこの訓練のおかげではないか」と自身で感じている。その訓…

『小説8050』林真理子|引きこもりっていう言葉が良くないよ

『小説8050』林真理子 新潮社[新潮文庫] 2024.05.05読了 日本大学アメフト部の問題はその後どうなったのだろう。日本大学理事長となった林真理子さんは、昨年末、副理事長に辞任を強要するなどしたとして提訴されているが、その後進捗は不明だ。女性として…

『板上に咲く』原田マハ|真似を極めることはいつしか突き抜けた存在になること

『板上に咲く MUNAKATA:beyond Van Gogh』原田マハ 幻冬舎 2024.05.03読了 この小説は、渡辺えりさんによるオーディブル(amazonのオーディオブック)の朗読が高い評価を受けている。それでも私は今のところ専ら紙の本を愛好しているから、眼で追って読んだ…

『プロット・アゲンスト・アメリカ』フィリップ・ロス|子どもの目線で迫り来る恐怖、崩れゆく家庭がリアルに描かれる

『プロット・アゲンスト・アメリカ』フィリップ・ロス 柴田元幸/訳 ★ 集英社[集英社文庫] 2024.05.01 フィリップ・ロスの作品は『素晴らしきアメリカ野球』か『グッバイ、コロンバス』を読みたいと前々から思っていた。先日書店に行ったらちょうどこの本…

『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ|インド人が書いた小説をもっと読んでみたい

『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ 武藤陽生/訳 文藝春秋 2024.04.27読了 インドのミステリーなんて読んだことない!というか、そもそもインド人作家の小説を読んだことがあるのだろうか。あっても記憶にないし、インド人作家の名前すら出てこない。人…

『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦|放心状態→何も考えていないわけではないらしい

『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦 早川書房[ハヤカワ新書] 2024.04.24読了 確かに、歩いているときやジョギングしているとき、つまり無心で身体を動かしている状態では、色んなアイデアが浮かんだり何かの問題に対する解決策がふいに思いついた…