『我が友、スミス』石田夏穂
筋トレ小説ってなんだろう?と芥川賞候補になっていたときに気になり、「スミス」というのが人の名前ではなく筋トレマシーンの名前だと知った。もう文庫本になるなんて、早い。
カーリング選手の藤澤五月さんが、ボディビルコンテストのために身体を鍛え上げた写真を見たときは私も驚いた。どちらかというと女性らしいふっくらとした姿が藤澤さんらしくて好きだったのだが。しかし彼女は元々ボディビルに興味があったそう。数ヶ月であれだけの身体を作ったことに、尊敬の眼差しになった。ものすごく芯があるなと。筋肉ってなかなかつかない。というか、外に見えてこない。特に女性の場合は脂肪がなくならないと筋肉が浮き出てこないから、なおさら難しいのだ。
運動不足だったから筋トレしてみようかな、という軽い理由でなんとなくジム通いを始めたU野は、BB(ボディービル)協会の理事であり、過去にBB大会7連覇を成し遂げたO島から声を掛けられたこともあり、ひょんなことから大会に出ることになる。
見た目で判断して競うボディービルは、まさしくルッキズムの代表だと思う。「女性らしく」ないといけないという目に見えないヘンテコな規則もある。男女平等にしようとかいっても、ボディービルの世界で男女を分け隔てなく判断するのは難しいだろう。なんせ身体の作りが違うのだから。だから、やはり完全に差別をなくすのは困難だと感じてしまう。
著者の石田さん自身も、仕事終わりには筋トレを欠かさないらしい。小説の主人公U野のようにボディビル大会を目指しているわけでもない。ただ、肉体をいじめ倒すと、ゆっくり寝られてリフレッシュできるからだという。私も、自分なりのなんとなくの筋トレではなくて、インストラクターさんにちゃんと習ってみたい。