書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『西行花伝』 辻邦生 / 仙人になる

『西行花伝』 辻邦生 新潮文庫 2019.4.27読了 歌人であり仏教僧である西行について、弟子の藤原秋実が綴る壮大な絵巻。森羅万象—この小説のテーマであり、作中では「いきとしいけるもの」とルビが振られている。 森羅万象の仏性に触れるとは、地上に現れたす…

『ゴッホの手紙』 上 エミル・ベルナール編 ・中下 J.vゴッホ-ボンゲル編 / 固い握手を送る

『ゴッホの手紙』上(ベルナール宛)エミル・ベルナール編 中下(テオドル宛)J.vゴッホ-ボンゲル編 硲 伊之助/訳 岩波文庫 2019.4.20読了 なんて素敵な表紙なんだろう。こんな本はブックカバーを着けずに持ち歩きたくなる。ゴッホの絵は、日本人にとっても…

『血族』 山口瞳 / 作者の性別にも本のレーベルにも良い意味で裏切られた

『血族』 山口瞳 P+D BOOKS 2019.4.13読了 次に読む本を選ぶ時に、何となく、男性作家のものが読みたいとか女性作家がいい、ミステリーにしよう、軽いタッチがいい、時代物にどっぷり漬かりたい、エッセイが読みたい、など誰しも考えると思う。これを手に…

『彼女に関する十二章』 中島京子 / 今を大事に丁寧に、自分の考えをしっかり持つ

/ 『彼女に関する十二章』 中島京子 中公文庫 2019.4.9読了 背表紙に、「ミドルエイジを元気にする上質の長編小説」とある。確かに(というかおそらく)50代くらいの女性にとって、ある!ある!という気持ちになるようなエピソードが続く。私にはしばらく先…

『プラスチックの祈り』 白石一文 / 本当であるかを決めるのは自分

『プラスチックの祈り』 白石一文 朝日新聞出版 2019.4.6 読了 全盛期の白石さんの作品にはとうていお目に掛かれないだろう、とわかってはいるのに手にしてしまう。ストーリーも読み終えた時の感覚も予想ができるのに読んでしまうのは、自分自身が白石さんの…