書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『戦後日記』 三島由紀夫 / 彼の華やかな日常とこだわりの数々

『戦後日記』 三島由紀夫 中公文庫 2019.7.28読了 三島由紀夫さんの日記作品集が中公文庫から刊行された。昭和23年から42年までの間に、日記の体裁で書かれたエッセイを集めたものである。三島さんの小説は大好きでよく読むのだが、小説以外をじっくり読んだ…

『春の戴冠』 辻邦生 / 花の都フィレンツェを思い浮かべながら

『春の戴冠』1〜4 辻邦生 中公文庫 2019.7.25読了 傴僂(せむし)のトマソが不気味なほどの存在感を発揮している。せむしという言葉は日本では差別用語として禁じられていると思うが、何故かせむしの人は小説においてキーとなる人物であることが多い。せむし男…

『小僧の神様・城の崎にて』 志賀直哉 / 生かされた彼がこれからどのように歩んでいくか

『小僧の神様・城の崎にて』 志賀直哉 新潮文庫 2019.7.10読了 ぼんやりとテレビを見ていたら、城崎温泉が映し出されていた。懐かしい。城崎温泉には2回訪れたことがある。浴衣を着て、地図を手に、いくつかの温泉を巡った記憶がある。そのテレビ番組では、…

『本格小説』 水村美苗 / 狂愛の物語・狂えるものがあるって感動的だと思う

『本格小説』上・下 水村美苗 ★★ 新潮文庫 2019.7.8 読了 やはり、面白かった。この小説を読むのは2回目である。10年以上前に読んだ時にも興奮したことを覚えているが、再読してもやはり物語世界に貪るように入っていけて、読んでいる間はじっくりと堪能す…

『 凍 』 トーマス・ベルンハルト / 色々な国の小説を読もう

『凍』(いて) トーマス・ベルンハルト 池田信雄/訳 河出書房新社 2019.7.1読了 これで、「いて」と読むらしい。まるで雪の結晶であるかのように、タイトルが凍えている。オーストリアの作家、トーマス・ベルンハルトさんのことは今まで知らなかった。そもそ…