『戦後日記』 三島由紀夫
中公文庫 2019.7.28読了
三島由紀夫さんの日記作品集が中公文庫から刊行された。昭和23年から42年までの間に、日記の体裁で書かれたエッセイを集めたものである。三島さんの小説は大好きでよく読むのだが、小説以外をじっくり読んだのは初めてかもしれない。
私が太宰治の文学に対して抱いている嫌悪は、一種猛烈なものだ。第一私はこの人の顔がきらいだ。第二にこの人の田舎者のハイカラ趣味がきらいだ。第三にこの人が、自分に適しない役を演じたのがきらいだ。女と心中したりする小説家は、もう少し厳粛な風貌をしていなければならない。(小説家の休暇 昭和30年6月30日 35頁)
といった見た目の批判から始まり、その日の日記は太宰批判だけで終わる。彼は、本当に太宰治が嫌いだったのだなぁと改めて感じた。でも、真に憎いのなら、無視をしていればいいのに、話題にもしたくないはずなのに。自分から彼の嫌さ加減を豪語しておりそれがかえって周りを煽る結果になっている。どうぞ聞いてくれと言ってるようなものだし、結局二人の関係を話題にして欲しいのかとも思ってしまう。これに対して太宰のほうはどうかというと、真っ向から三島を批判しているイメージはない。どちらかというと相手にもしていないような気がする。
三島さんは、色々な業界人と幅広く交流していたこと、観劇が好きだったこと、西洋文学(特にフランス文学)を愛していたこと、常に筋トレのためにジム通いをしていたこと、また結婚に対する考え方もよくわかり、三島さんの日常はこんな風でこんな考え方をして過ごしていたんだな。そんな彼が、日本文学界に素晴らしい小説を多く生み出した。三島さんの小説が好きな人なら、一度読むことをおすすめする。