書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『地面師たち』新庄耕|ハリソン山中とは何者なのだろう

『地面師たち』新庄耕 集英社[集英社文庫] 2024.12.04読了 特に読むつもりはなかったのだけど、知人からこの続編の単行本を貰って、せっかくならと最初から読むことにしたのだ。Netflixで絶賛されているのは知っていた。てか、最近のネトフリはすごいみた…

『鍵のかかった部屋』ポール・オースター|誰かを探すのと同時に自分を見つめ直す

『鍵のかかった部屋』ポール・オースター 柴田元幸/訳 白水社[白水Uブックス] 2024.12.02読了 ついに刊行されたオースター最大の長編小説『4321』だが、もうしばらく部屋に寝かせておくことにする。先日、柴田元幸さんのトークイベントに参加して色々なお…

『若草物語』ルイーザ・メイ・オルコット|この物語になくてはならない存在は四姉妹の母親

『若草物語』ルイーザ・メイ・オルコット 小山太一/訳 新潮社[新潮文庫] 2024.11.30読了 ブラックフライデーで翌日まで20%オフとあったから、いそいそと洋服を見に行ったら素敵な緑色のセーターがあった。ちょうど声をかけてきたスタッフに「色が素敵です…

『シンコ・エスキーナス街の罠』マリオ・バルガス=リョサ|ペルーの政治、ビジネス、司法

『シンコ・エスキーナス街の罠』マリオ・バルガス=リョサ 田村さと子/訳 河出書房新社 2024.11.28読了 ペルー・リマを舞台とした現代小説で、リョサさんの作品の中ではかなり(というか一番)読みやすい部類に入る。 シンコ・エスキーナス街は、至る所で強…

『海と毒薬』遠藤周作|罪悪感とは何なのだろう

『海と毒薬』遠藤周作 新潮社[新潮文庫] 2024.11.26読了 言わずと知れた遠藤周作さんの名作である。新潮文庫の夏のフェアが好き(もう冬だけど!)で、というかフェアというよりも購入すると毎年ついてくるステンドグラス風の栞が好みなんだよなぁ。この『…

『逝きし世の面影』渡辺京二|外国人からみた日本はどんなだろう

『逝きし世の面影』渡辺京二 平凡社[平凡社ライブラリー] 2024.11.25読了 名著と言われているからいつか読もうと思っていた本である。この作品の『逝きし世の面影』というタイトルのなんと素晴らしいことだろう。そもそも「面影」という言葉自体に憂いがあ…

『大使とその妻』水村美苗|美しい日本語、そして古き良き日本の文化

『大使とその妻』上下 水村美苗 ★★ 新潮社 2024.11.19読了 なんて美しい物語だろう。最後の数頁は、雑音を抹消して(流れていただけのテレビを消したり深呼吸したりとか)静寂の中じっくりと。読み終えた今、この余韻を深く深く味わっており、彼らだけでなく…