書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『バリ山行』松永K三蔵|爽快感がたまらない。メガさんは最後に何と言ったのだろう?

『バリ山行(さんこう)』松永K三蔵 講談社 2024.08.26読了 著者の松永さんが会見で「オモロイので」と語っていた通り、オモロくて何よりバリ読みやすかった。いや、『バリ山行』の「バリ」はこの意味じゃないのよね。タイトルを初めて目にした時は私は「と…

『別れを告げない』ハン・ガン|隠された歴史を紐解く

『別れを告げない』ハン・ガン 斎藤真理子/訳 白水社[EX LIBRIS] 2024.08.25読了 済州島4・3事件のことは全く知らなかった。韓国で1948年に起きた大規模な集団虐殺事件のことだ。この小説を読みながら少しずつ把握したつもりだったが、実際には訳者の斎藤…

『檜垣澤家の炎上』永嶋恵美|ネット用語の炎上ではない、舞台は大正時代

『檜垣澤(ひがきざわ)家の炎上』永嶋恵美 新潮社[新潮文庫] 2024.08.22読了 直近の芥川賞受賞作を買うために書店に行ったら、文庫新刊の棚で見つけた。失礼ながら永嶋恵美さんという方のことは知らなかったが、帯にある『細雪』『華麗なる一族』に惹かれ…

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋|中性的な思考小説

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋 新潮社 2024.08.18読了 先日第171回芥川賞を受賞した作品である。朝比奈秋さんの名前は何度か目にしており『植物少女』という小説家が何かのテレビ番組で紹介されているのを見てとても気になっていた。 結合双生児とし…

『ガープの世界』ジョン・アーヴィング|人間が生きることの全てがここにある

『ガープの世界』上下 ジョン・アーヴィング 筒井正明/訳 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.08.17読了 いつか読みたいなとずっと思っていた作品。西加奈子さんを始めとして多くの方が絶賛し、アーヴィングの名を世界中に知らしめた作品だ。自伝的小説ということで…

『彼岸花が咲く島』李琴峰|言葉の持つパワーを考える

『彼岸花が咲く島』李琴峰 文藝春秋[文春文庫] 2024.08.08読了 約3年前に石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』と同時に芥川賞を受賞した作品である。李琴峰さんの小説は、日本人以上に美しい日本語に魅了されていくつか読んでいる。この小説は、言葉、言語…

『クレーヴの奥方』ラファイエット夫人|奥方、そして夫人、名前は?

『クレーヴの奥方』ラファイエット夫人 永田千奈/訳 光文社[光文社古典新訳文庫] 2024.08.07読了 『クレーヴの奥方』という古めかしい奥ゆかしいタイトルもそうだが、より興味を掻き立てられるのが作者の名前がラファイエット「夫人」となっていることで…

『失われたものたちの国』ジョン・コナリー|「儚くなる」という表現がいいなぁ

『失われたものたちの国』ジョン・コナリー 田内志文/訳 東京創元社 2024.08.05読了 ファンタジーを単行本で買うことは滅多にないのだけれど、去年読んだ『失われたものたちの本』がめちゃくちゃおもしろくて、「あ!続編出たんだー」と書店で小踊りしてし…

『ポースケ』津村記久子|普通の人たちのただの日常

『ポースケ』津村記久子 中央公論新社[中公文庫] 2024.08.01読了 これ、芥川賞を受賞した『ポトスライムの舟』の続編なのに存在を全く全然知らなった。なんか目立たないよね?書店で何の気なしにふらふらしていたら、津村記久子さんのフェアみたいなものを…

『万博と殺人鬼』エリック・ラーソン|当時のアメリカの象徴・シカゴ万博

『万博と殺人鬼』エリック・ラーソン 野中邦子/訳 早川書房[ハヤカワ・ノンフィクション文庫] 2024.07.30読了 本の表紙の肖像画的なものが一瞬夏目漱石さんのお札(旧紙幣になってしまうのよね)の顔に見えた。いやいや、よく見ると全然違う。たぶん、こ…