書に耽る猿たち

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『地面師たち』新庄耕|ハリソン山中とは何者なのだろう

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『地面師たち』新庄耕

集英社集英社文庫] 2024.12.04読了

 

に読むつもりはなかったのだけど、知人からこの続編の単行本を貰って、せっかくならと最初から読むことにしたのだ。Netflixで絶賛されているのは知っていた。てか、最近のネトフリはすごいみたいね。『極楽女王』や『サンクチュアリ』もヒットしている。『サンクチュアリ』は少しだけ観た。確かにおもしろいし役者が粒揃いで演技力だけでも観たいと思わされる。

 

想していた通りというかみんなの反応通り、かなりおもしろかった!スルスルと読めた。文章自体が読みやすいというのもあるが、私自身曲がりなりにも不動産業に関わっているためなんとなく細かな動きが想像できるからかも。実際に起きて世間を騒がせた「積水ハウス地面師詐欺事件」を元にして著者の新庄耕さんがフィクションにまとめあげたもの。

 

面師たち、つまり地面師集団のひとりひとり、拓海、後藤、麗子、竹下らがみんなおもしろい。そしてハリソンを追う刑事の辰、また不動産会社の青柳など脇を固める人物らも粒だった個性がある。なかでもハリソン山中の人物像は突出している。実際にハリソン山中のような人がいたら薄気味悪いだろうなぁ。

 

はこういう集団のなかでもほとんどの人には多少は人間らしさというか、過去に起きた物事のせいで悪事に手を染めるしかなかったという若干の情状の余地みたいなものがあるのだけれど、ハリソン山中だけは違うのだ。だからこそ、小説の中では主人公になる。

 

書きはおもしろいのだが、なんというか文章自体に深みはなくて、本当はもっとドロドロした世界なんだろうけどリアリティがあまり感じられなかったのが残念なところ。いや、そもそも文体とストーリー両方を兼ね備えた作家ってそうそういない。

 

川悦司さん演じるハリソンの「得体の知れなさ」が好評判なようで、ネトフリのドラマのほうがおもしろいのかも。続編の本は近いうちに読むつもり。

↓不動産つながりということで、今年読んだ本はこちら。これはよりあっさり読める。

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↓ジャンルは医療ミステリーなので全く異なるが、作風はこれに近いかなと思った。

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