書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(あ行の作家)-井上靖

『夏草冬濤』井上靖|自分もまた何かを為さねばならぬ-ある一夜の想いが作家井上靖の原点

『夏草冬濤(なつぐさふゆなみ)』上下 井上靖 新潮社[新潮文庫] 2025.07.13読了 前作『しろばんば』では1頁めから「しろばんば」という言葉が出てきた。今作も1頁めから「ナンガレ」という耳慣れない言葉が紙面に踊り出し、読む者の興味を惹きつける。冒…

『氷壁』井上靖|人間を信じるということ

『氷壁』井上靖 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.12.19読了 先月井上靖さんの『しろばんば』を読んで、文豪のとてつもない力量に打ち震えた。続編の『夏草冬濤』を準備してはいるがなんとなく今は少年の気持ちに寄り添う気分ではないのか、大人が主人公のこの作品…

『猟銃・闘牛』井上靖|大衆的なテーマにも文学性が息づく

『猟銃・闘牛』井上靖 新潮社[新潮文庫] 2024.11.11読了 先日井上靖さんの『しろばんば』を読み、その類まれなる物語性と文章に心を奪われたので早速初期の作品を読んだ。 『猟銃』 これは井上さんの処女作で佐藤春夫さんが絶賛した小説である。これが初め…

『しろばんば』井上靖|少年期を扱った本格小説、やはり井上靖さんは偉大だ

『しろばんば』井上靖 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.11.05読了 土蔵造りの家に住む洪作は、おぬい婆さんと二人暮らしである。伊豆の湯ヶ島という田舎町で、5歳からの幼少期を過ごした洪作の少年期の心の動きや成長が丁寧に情感たっぷりに書かれた作品である。…