書に耽る猿たち

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『MONKEY vol.20』柴田元幸責任編集/センスの良さが光る文芸誌

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『MONKEY  vol.20』柴田元幸責任編集

スイッチ・パブリッシング 2020.6.23読了

 

誌である。タイトルがMONKEYだが、別に猿に特化した読み物というわけではなく、柴田元幸さんが責任編集を務める文芸誌だ。「いい文学とは何か、人の心に残る言葉とは何か、その先の生き方を探していきます」とある。少し前に、柴田元幸さんが訳した小説を読んだ時に知り、購入してみた。もちろん猿好きとしてはタイトルにも心奪われたのだけれど。

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 集は「探偵の一ダース」、柴田さんが訳した作品をはじめ数人が書いた探偵ものの短編が収められている。確かに、読書にハマるきっかけが探偵ものや推理小説だったという人は多いだろう。特に子供の頃からの本好きな人は。

人になってから読書が好きになる場合、自分の好みの文体や文章が見つかり夢中になることは充分ある。しかし子供の時分には、文体がどうとかは正直わからない。単純に、続きが気になるかどうか、わくわくするかどうかだ。やはり、ストーリー性があり、どんでん返しがあり、やられた!と唸る(これが楽しい)のは、探偵ものやミステリだ。

11作(何故か1ダースでない!)の小説が収められており、これがなかなか面白い。古典ミステリの巨匠アーサー・コナン・ドイルさんから、現代SFを手がける円城塔さんまで。それぞれ異なる切り口から探偵ものを形成しているのだけれど、本格ミステリもあれば、くすりと笑いがこぼれるようなものまで。まだ未読の作家さんも半分くらいいて、片岡義男さんや柴崎友香さんの小説は他にも読んでみたくなった。

集以外では、エッセイあり、対談ありで、文学好きを飽きさせない。ただ字面が目いっぱいあるわけではなく、挿絵や写真も多く挿入されており視覚的にも楽しめる。何より、全てにセンスの良さが感じられる。

番良いのは、ほとんどが読み切り作品なところ。最後の数頁、3作だけは刊行時からの連載のようだ。まぁ、年に3回の発行(4ヶ月に1回)だから連載ばかりだと無理か。そんなに待てないよなぁ、忘れちゃうよなぁ。でもそもそも、このゆるーい感じが良い。定期購読すると、24%引OFFでオリジナルトートバッグも貰えるみたいだから悩んでいるところ。