書に耽る猿たち

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『絶望キャラメル』島田雅彦|町おこしのために立ち上がれ

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『絶望キャラメル』島田雅彦

河出書房新社河出文庫] 2022.4.18読了

 

快な文体の青春コメディといったところだろうか。高校野球の場面が多かったから青春スポーツ小説の印象も強い。島田さんらしく政治要素もふんだんに盛り込まれている。登場するキャラクターが、なんというか結構テキトーであっけらかんとしていて、だから読んでいるこっちも肩肘張らずに楽に読めた。

れた地方都市葦原に、伯父の寺の跡継ぎとして江川放念(えがわほうねん)が帰ってきた。放念は、葦原は「絶望」が重く立ち込めていると言う。そこでこの町おこしとして「原石発掘プロジェクト」なるものを思い付く。そこで登場するのが情報通の緑川夢ニ、肩が強く石投げが得意な黒木鷹、美少女青山藍、微生物大好き女子白土冴子の4人である。

念とこの若者4人がすったもんだしながらも夢に向かい走り続ける様がユーモアたっぷりに爽快な空気で書かれている。今までの島田雅彦さんが書く小説と雰囲気がだいぶ異なる。ノリと場面の移り変わり方が少し伊坂幸太郎さんの作品に似ているように思った。こんなにとんとん拍子でうまくいく展開なわけないよなと思いながらも、歯切れのよい文体が心地よく爽快に読んだ。

の作品の舞台は葦原という小さな街である。最近読んだ小説が3作続けて小さな街や村を舞台としていた。他の地域を知らずいやがおうにもその土地に生きるしかない村人たち、小さな街から飛び出して都会に羽ばたきたい少女、そして今回は街を活性化させようと自ら立ち上がる者たち。私たちはいかに土地とつながっているか。足で立つこの地に胸をはって生きること、地を愛することが豊かな人生に繋がるのだと思った。

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