書に耽る猿たち

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『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦|放心状態→何も考えていないわけではないらしい

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『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦

早川書房[ハヤカワ新書] 2024.04.24読了

 

かに、歩いているときやジョギングしているとき、つまり無心で身体を動かしている状態では、色んなアイデアが浮かんだり何かの問題に対する解決策がふいに思いついたりなんてことがよくある。私もジョギング中に、ブログで「こんなことを言いたかったんだよな」「まさしくそんな言い回し!」と発見することが多々ある。

 

かし、散歩やジョギング中の放心状態とは実は何も考えてないわけではないらしい!「単に特定テーマで考えていないだけであって、同時にさまざまな想念が浮かんでいる状態にある(62頁)」と知って目から鱗だった。では、無心になるということがそもそも無理なのかしら。

 

川書房から[ハヤカワ新書]というレーベルが今年の2月に誕生した。以前早川書房のホームページを覗いたときに「ハヤカワ新書の編集者」の採用募集をかけていたから、きっとそれ。今でも募集しているみたいだから、もっと大きくしたいのか、まだ相応の人が見つかっていないのか。

 

の新書第一弾として2月に刊行された本のうちの一冊がこの本である。早川に新書のイメージが全くないしどんなもんかなと思ったのと、久しぶりに新書を読んでみようかなという気分になった。とはいえ選んだのは馴染み深い島田雅彦さんの作品だ。

 

2章の「散歩する文学者たち」が興味深かった。永井荷風を始め、文豪は街を彷徨い散歩をして人が多いらしい。漱石の『彼岸過迄』が「にわか探偵もの」で、島田さんによると「尾行」もある意味で散歩小説だというのがおもしろい。

 

半からは、散歩の話というよりも東京の酒場放浪記のような体を成してきた。赤羽から始まり、池袋、西荻窪高田馬場、登戸、町田、新橋、神田などなど…。東十条のモツ焼き屋「埼玉屋」がかなり気になった。「食に対して研究熱心な大将が作るモツは、ミシュランの星がついてもおかしくないレベルだ」と島田さんは言う。読み終わる時には、散歩の本というよりも呑兵衛の本を読んだ感覚になった笑。

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