書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(な行の作家)

『壁の男』貫井徳郎/才能は関係ない、絵は描いた人の心を表す

『壁の男』 貫井徳郎 ★ 文春文庫 2019.11.16読了 小説の中に絵画作品が出てくるとき、私は大抵、こんな絵だろう、と勝手に想像してしまう。今回の、壁に絵を描き続ける男の絵は、アンリ・マティスのような絵か、はたまた話題のバスキアのような絵か。太い線…

『赤い月』 なかにし礼 / あなたは生きることの天才だ

『赤い月』 上・下 なかにし礼 ★ 岩波現代文庫 2019.7.31読了 波子たちが牡丹江からハルビンへ向かう軍用列車に乗っている20日間の出来事が壮絶である。汽車が止まる度に、ソ連軍の攻撃からなんとか逃げ、満鉄社員に金目の物をあげて列車を動かしてもらい、…

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 / 少女の感性で描かれる大人のための小説

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 朝日新聞出版 2019.6.11読了 一体、どんな話なんだろう?そもそも、「椿宿」って何と読むのだろう、つばきやど?つばきしゅく?地名であろうか。帯に書かれてあるキャッチコピーも、てんでばらばらな単語が並び、よくわからない感…

『彼女に関する十二章』 中島京子 / 今を大事に丁寧に、自分の考えをしっかり持つ

/ 『彼女に関する十二章』 中島京子 中公文庫 2019.4.9読了 背表紙に、「ミドルエイジを元気にする上質の長編小説」とある。確かに(というかおそらく)50代くらいの女性にとって、ある!ある!という気持ちになるようなエピソードが続く。私にはしばらく先…

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 / これぞ西村さんの私小説、人間らしさに溢れている

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 角川文庫 2019.3.24 読了 蠕動(ぜんどう)、あまり目にしない単語である。虫が付いているから虫の動きに関することだろうか。調べてみると、①ミミズなどの虫が身をくねらせてうごめきながら進むこと。②筋肉の収縮波が徐…