書に耽る猿たち

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「冷血」髙村 薫

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「冷血」上・下    髙村薫     ◎

新潮文庫

2019.1.3読了

今年に入ってから読んだ本を1冊目からUPしようと思っていたので、数回分はバックデートになることをご勘弁あれ。

髙村さんの本は、合田シリーズは「マークスの山」と「晴子情歌」、あとは「土の記」しか読んだことがなくて、自分にはそんなに合わないかな?と思っていたけど、いやはや、今回の「冷血」は今までで一番良かった。

犯人も、被害者も、どんな経緯で起きた犯行なのかも最初のほうに全て判明するのに、何故こんなにぞくぞくして引き込まれるのか。緊迫した状況設定と心理描写からなのか、髙村さんの紡ぎ出す文章には切迫した息苦しさがあり、それが魅力でもある。

結局のところ、犯人だけでなく、被害者家族も、警察も、そして読んでいる現代社会の私たちにも、冷たい血が流れているということなんだろうか。

ノンフィクションの金字塔の1つ、トルーマン・カポーティの「冷血」よりも私は面白く読めた。「冷血」をタイトルにするくらいだもんな。今年に入ってまず読んだ本が良かったから、なんとなく2019年の私の読書も良いものになりそうな気がする。