書に耽る猿たち

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『遠い声 遠い部屋』トルーマン・カポーティ|豊潤な言葉遣いと比喩表現が美しい

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『遠い声 遠い部屋』トルーマン・カポーティ 河野一郎/訳

新潮社[新潮文庫] 2022.8.11読了

 

メリカ文学が無性に読みたくなり、手にしたのがこの本。カポーティさんの自伝的小説のようである。表紙の写真からは雄大な土地と空が立体的に感じられ、雰囲気がありとても良い。  

を亡くした13歳のジョエルは、まだ見たこともない父親を探しにアメリカの田舎町を訪れる。父親が住んでいる家にたどり着くが、父親は具合が悪いということでなかなか会わせてもらえない。継母のエイミイ、召使いのミズーリ、近所に住む双子の姉妹、エイミイの従兄弟のランドルフなどと親しくなりながら、まだ成熟していないジョエル少年の精神の成長を書いたストーリーである。

ーン・シティという町の描写(25頁以降)、ジョエルがミス・エイミイと家の中で初対面するときの描写(56頁以降)が素晴らしい。情景がありありと目に浮かぶようだ。作品を通して豊潤な言葉遣いと比喩表現が際立ち、文章がとても美しい。ジョエルが見たものなのか夢の中なのか想像の賜物なのか、だんだんとその境目がわからなくなり、幻想的な雰囲気も感じられた。

ポーティさんの作品は『ティファニーで朝食を』と『冷血』の2作を読んだことがあるが、『冷血』は、もう、凄まじかった。この『遠い声 遠い部屋』は、彼の最初の長編作品ということで、刊行された当時は「早熟の天才が現れた」と絶賛されたらしい。作品全体に漂う雰囲気はとても好みなのだが、一度読んだだけでは理解するのがちょっと困難だ。