書に耽る猿たち

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『チェスナットマン』セーアン・スヴァイストロプ|息もつかせぬ展開、これはドラマのほうが良さそう

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『チェスナットマン』セーアン・スヴァイストロプ 髙橋恭美子/訳

ハーパーコリンズ・ジャパン[ハーパーbooks] 2022.6.11読了

 

慣れないタイトルの『チェスナットマン』という単語は「栗人形」のこと。そもそも栗人形というのが日本では馴染みがないけど、藁人形のようなものだろうか。表紙の写真がそれ。なんか気持ち悪いというかおぞましく嫌悪感がある。

された女性の腕が切断されている。そして、殺害現場にはチェスナットマンが置かれている。この事件の謎を解き犯人を突き止めるべく、警察重大犯罪課(通称殺人課)のトゥリーンとヘスの2人の刑事がタッグを組むいわゆる警察ものである。

は過去の事件と繋がっているのではないかといぶかしむヘス。それは1年前に森で失踪したクリスティーネの事件である。この事件はどうしても、山梨県道志村で起きた女児失踪事件を連想してしまう。クリスティーネの母親である社会問題大臣のローサが涙ながらに訴える姿が、あの女児の母親に重なり辛くなるのだ。

ゥリーンは幼い娘と暮らすシングルマザーで、頭が切れる大胆な女性。ヘスは一時的に派遣されている連絡担当官で自由奔放、そしてややこしい目を持つ。「ややこしい」というのはある登場人物の表現で、左右異なるブルーとグリーンの目を持つのだ。ヘスには登場した場面からとても興味を惹かれた。

の小説はNetflixのドラマがかなりヒットしており、この小説はその原作である。いつものことながら本から入る私だが、まぁ長かった〜。文庫で680頁ほどもある。でも、ストーリーテリングが巧みで続きが気になりぐいぐいと読ませる。私としては犯人が意外な人物で驚いた。

面の移り変わりが激しい。まるで映画やドラマを観ているかのようだった。でもそれぞれのパートが短くすんなりおさまってるせいか混乱はせずに読める。地の文が現在進行形であることが不評だというレビューも見られるが、私はこの作品の臨場感・緊迫感を演出するのにとてもよいと感じた。

説でも手に汗握る感覚になるのだけれど、やはりこれは映像のほうが楽しめそうかなと思う。それもそのはず、著者は元々ドラマの制作・脚本家なのだ。どうりで。なんとなく続編がありそうな終わり方だった。ヘスのややこしい目の真相も語られていないし。