書に耽る猿たち

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『カササギ殺人事件』 アンソニー・ホロヴィッツ / 英国古典ミステリーを愛する

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カササギ殺人事件』上・下  アンソニーホロヴィッツ  山田 蘭/訳

創元推理文庫  2019.5.19読了

 

末の海外ミステリランキングを総ナメにした本作品、書店でもうず高く積み上げられていた。アガサ・クリスティへのオマージュと謳われておりなんとなく予想はしていたが、読んでみるとその巧みな構成に度肝を抜かれた。これから読もうとしている人は、下記は読まないほうがいいかもしれない。物語の内容自体には触れてはいないが、せっかくなのでまっさらな状態で読むべし。

巻は予想通りで、クリスティやコナン・ドイルのような英国風の格調高い古典ミステリを読んでいる感じ。まぁこんなものかな、名探偵が出てきて最後に犯人は○○だ!となるお決まりのパターンだろうとたかを括っていたのだが、下巻になると唐突に急展開に。上巻を読んでいる間はただ文字を追っていた感じだったが、下巻から俄然面白くなった。古典ミステリを現代風にオマージュするとこうなるんだと納得した。

線が張めぐらされていて、先を読ませるストーリーと構成力は素晴らしい。海外ミステリーのわりには文章も読みやすく、訳文もこなれている。おそらくどんな世代の人にも受け入れられる作品だと思う。私としては、ディケンズにミステリ要素があると涎が出るんだけど。

るほど、アンソニーホロヴィッツさんのことを調べてみると、テレビや映画の脚本家でもあるそうだ。だから大衆に読みやすいと感じたのだろう。何がすごいって、シャーロック・ホームズシリーズの続編『絹の家(英語版)』の執筆について、アーサー・コナン・ドイル財団が正式に認めたということ。幼少期から大好きな古典ミステリーを読みふけり、自ら小説家となり、それだけでも嬉しいのに、大好きなホームズ作品シリーズに名を連ねられるとは、なんと幸せなことだろう。