書に耽る猿たち

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『ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊/自由奔放なゲバラとピョートルの冒険

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ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊

文春文庫  2020.1.25読了

 

ューバ革命の英雄、チェ・ゲバラ氏といえば、どんな人物かそして何をしたのかを具体的に知らなくても、星のマークとその精悍な顔つきから壁画やマークになっており誰もが目にしたことがあるだろう。実は私も詳しく知らなかった。何年か前に没後50年だかで話題になっていて気になっていた。この小説は海堂さんがゲバラ氏の生涯を元に小説にしたシリーズの第1巻だ。大好きな小説としてゲバラ氏を理解しかつ楽しめるなんて私にうってつけだ。

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命よりはるか前の青春時代に、モーターサイクルで南アメリカを旅したゲバラ氏の自伝が有名だが、この1巻はその時代を描いている。幼少期のことも回想という形で触れられている。ゲバラは喘息持ちだったことも知らなかったし、そもそも「チェ」というのは名前ではなくて、アルゼンチンの母国語で「やぁ」「君」という意味らしい。本当の名前はエルネスト・ゲバラなのね。

だ序章という段階ではあるけれど、このラテンアメリカの冒険譚だけでも面白く読めた。革命家になるだけあって、若かりし頃から生命力溢れるむき出しの闘志があり、時に人間らしく、何よりも勉強家だ。医者になることを目標にしているが、この頃は吟遊詩人になりたいという夢のほうが勝っていたようだ。ボルヘスの名前がよく登場した。まだ彼の本は未読だから今度挑戦したい。

バラと一緒に旅をしているピョートルも非常に興味深く素敵な人物だ。共に信頼し合い、高みを目指し影響し合える仲。それでいて学生時代の仲間だからこそのくだらないバカ話も出来る関係。最後ピョートルがあんなことになって悔しくて悲しかったけれど、このこともゲバラがこの先立ち向かう為のエネルギーになる1つの要因なのかもしれない。

年買った帝国書院の世界地図と日本地図帳が家にある。最近は読んだ本の舞台を必ず地図で確認するようにしているのだ。知らない国もまだまだたくさんあるし、国は知っていてもその街がどこにあるのかどんな地形なのかを知ると、その本を数倍楽しめる。もっと知りたくなって、いつか行きたいと思う場所もたくさんある。

に今回の小説はゲバラ氏が青春時代を謳歌した旅の話だ。計画も立てず行き当たりばったりの自由な旅だから、地図も大いに役立つ。ここからここに進んだんだなと知らない地名にも想いを馳せながら、ゲバラとピョートルと共に冒険しているかのようにわくわく出来た。高校時代、地理は苦手なはずだったのに、何故か今は地図を眺めるのが楽しい。