書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『ゲバラ漂流 ポーラースター2』海堂尊/ラテンアメリカの近代史を学ぶかのように

f:id:honzaru:20200126191217j:image

ゲバラ漂流  ポーラースター2』海堂尊

文春文庫  2020.1.30読了

 

回読んだポーラースターシリーズの第2巻である。医師免許を取得したゲバラが、再び旅に出る。今度は1人で。しかし途中から太っちょロホ弁護士と再会し、なんの因果か一緒に行動をすることになる。このロホが厄介な人物でゲバラともそりが合わないのだが、至る所で助け合う格好になってしまう。しかし、1巻のピョートルが魅力的過ぎて今回の相棒はどうにも好きになれなかった。

んだろう、中南米の近代史を勉強している気分だった。高校時代に習った世界史でも、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国等はよく覚えているが、中南米の歴史ってあまり詳しく習わなかった気がする。それとも習ったけどあまり印象に残らなかったのかな?とにかく、近代史講義をロホや各国の人物からひたすら聞いているようで、少ししんどかったのは事実だ。

ューバ革命に至るまでのゲバラの旅が続く。アルゼンチンから北上し、カリブ海の島に至るまでに何人もの要人に出会い影響されかつ影響力を及ぼしていく。カストロの名前がようやく登場してきた。

でも興味深かったのは、パナマ国家防衛隊米州学校。軍人や諜報員を養成する施設で、3ヶ月の期間をここで過ごしたゲバラは優秀な成績で卒業する。とはいえ、解説を読むと、こんな施設は実際には存在しない。そもそもこのシリーズは史実を元にしたフィクションであるため、虚構が散りばめられている。しかし私たちは難なく騙されてしまう。巻末の参考文献の量には脱帽だ。これだけの文献を読み、理解し、何度も南米に訪れた海堂さんだからこそ、読者を騙すことが出来るのだ(良い意味で)。

作同様に引き続き、世界地図帳をたまにぺらぺらやりながら国や街を確認した。1巻以上に名前しか知らない国(場所がはっきりわからない)が多いのだ。この小説には、巻頭に地図があればより親切なのになと思う。家で読む分には良いが、外出先では地図を見られないから。その都度スマホで調べる程でもないし。たまに、これいらないでしょ、と思う小説に巻頭地図が付いていることがあるが、あれは作者の意図なのかしら。読者のためを考えて、地図のありなしをもう少し意識してくれると嬉しいのだけれど。