書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李龍徳|在日韓国人について考える

f:id:honzaru:20210228151503j:image

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李龍徳(イ・ヨンドク)

河出書房新社 2021.3.1読了

 

かなか衝撃的なタイトルである。竹槍で突き殺すなんて、いったいどんな戦いが始まるのかと身構えてしまうが、これは「ヘイトクライム」を扱ったディストピア小説だ。

イトクライムとは、人種、宗教、性的指向など特定の属性を持つ個人や集団に対して引き起こされる嫌がらせや暴行等の犯罪行為などのこと。この作品では、特に在日韓国人への差別について書かれている。柏木太一は、誰を集めて何をしようとしているのか。ざわざわした気持ちで頁をめくる。

構読み進めるのが困難だった。文章自体は難しくはないのに、自分の身近にはなくそんなに深く理解出来ていないテーマだからだろう。私は純粋な日本人で日本に生まれ育った。当たり前のように生きているが、世の中はそんな人ばかりではない。

れを読むと、在日韓国人がいかに差別を受けてきたのか、直接何かをされなくてもいかに住みにくい、生きづらい思いをしてきたのが痛いほどわかる。正直、読後感は重たいが、私たちが考えなくてはいけない問題がたくさんある。

中に裁判員裁判が出てくる。被告人、被害者、または裁判員が何らかの差別を受けている人だったらどうなのだろう。被害者の気持ちに寄り添いながらも裁かれる人の気持ちを汲み取れるのだろうか。客観的な判断が出来るのだろうか。相手がどんな人であれ、本当の意味で「他人の気持ちを考える」ことが今後はより一層重要になる。

た、女性蔑視などよく問題視されるが、言葉遣いはどうなのだろうか?女性が「このやろう」「でかい」「これ美味い!」など言うと、今でも「下品だ」とか「女の子なんだから」とたしなめられる。これもよく考えたら蔑視なんだろうかもと考えてしまう。

龍徳さんは、埼玉県生まれの在日韓国人三世である。2014年に『死にたくなったら電話して』で第51回文藝賞を受賞されてデビューされた。当時は文藝賞を意識していなかったのか全く記憶にない。今回読んだ『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』は柳美里さんが「柳美里選書」で選んでくださった本である。こんな機会でないと読まなかっただろう。

honzaru.hatenablog.com