書に耽る猿たち

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『マーダーハウス』五十嵐貴久|青春小説風だけど殺人館

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『マーダーハウス』五十嵐貴久

実業之日本社実業之日本社文庫] 2022.6.18読了

 

十嵐貴久さんといえば、ドラマ化もされた『リカ』が有名である。私はドラマも見ていなく小説も読んでいない。結構グロくてサイコパスを描いているというのは何となく知っていた。この『マーダーハウス』は「殺人屋敷」「殺人館」といったところだろうか、読む前から不気味さが漂う。

イトルからおどろおどしさを予想していたのだけれど、青春小説という感じで拍子抜けした。確かに人が死んだりするけど、ほぼ終盤までサラッとした調子で進むから「あれ?想像と違うな」という感じで読み進めた。

ェアハウスは多くの若者が一度は住みたいと憧れるもの。共同生活を舞台にしたドラマにあるようなキラキラした影響のせいで、なんて楽しそうなんだろうと私も若い頃は思ったものだ。実際に男女4人で住んでいる友人がいたけれど、楽しそうだった。まぁ、自身の生活スタイルが凝り固まってしまう年相応になると、他人との共同生活はなかなか難しいだろうけど。今や、数日の旅行ですら余程の仲でないと面倒に感じる。

の小説の主人公・新潟県出身の理佐は、神奈川県の大学に入学することになり、同時に実家を出て一人暮らしを始めようとする。そこで見つけたのが鎌倉にある格安シェアハウス「サニーハウス鎌倉」だった。駅から遠いということに目を瞑れば、プール、シアタールーム、庭園もあり、広さと設備、プライバシーも確保された西洋風洋館に格安で住めるのだ。

春小説と思っていたのが、突如怒涛の展開を見せる。どんでん返しまではいかないけど、ラストにかけてこんなにも頁を捲る手が早まったのは久しぶりだった。エピローグを読み終えて最後の頁をめくったところをマジマジと見てしまい、その頁を1番見入ってしまったかもしれない。

章がめちゃめちゃ読みやすくて、読むのになんの苦痛もなかった。その代わりと言ってはなんだが、文体を味わうという楽しさはないのだが、五十嵐貴久さんの作品は、ストーリーを楽しむものなんだろう。こういうサイコパス系が好きな人はたまらないだろう。ホラーサスペンスのイメージがある五十嵐さんだが、オールラウンドにいろんな小説を書いているようなので、他の本も読んでみたい。