書に耽る猿たち

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『現代生活独習ノート』津村記久子|単独で学習する現代人

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『現代生活独習ノート』津村記久子

講談社 2022.6.16読了

 

年の11月に刊行された津村記久子さんの短編集を読んだ。過去に文芸誌に掲載された8つの作品が収められている。タイトルに「生活独習」とあるように、なんらかの物事を独りで学習するようなストーリーになっている。独身女性が主人公であるものが多い。もちろん中には家族で住む人や子供もいるが生活の土台はみな1人なのだ。

日前に内閣府の『2022年度版男女共同参画白書』が閣議決定された。現代の家族構成は「単独」の世帯が最も多いという結果だったそう。家族の姿や人々の人生設計が大きく変化し多様化している。どんな家族構成でも経済的自立ができるようにサポートすべきという目的があるようだ。この短編集を読んでいて、まさに世相を反映しているな、単独世帯が多い現代だからこそ必然的に生まれた物語なのだと思った。

までの津村さんの作品は、語り手の対象が「人間」であることが多かったのに対し、この本にある作品では対象が「モノやコト」になっている。そのせいか、いつもよりも動きが少なく無機質でドライに感じてしまう。クールな眼差しで物事を俯瞰し、芯をハッと突くキラリと光る津村さんの文章は健在である。

はいえ、私が今までに読んだ津村さんの作品に比べると強く印象には残らなかった。どんな作家であれ、作品の全てが素晴らしいわけはあり得ないし、これは仕方がない。もちろん津村さんへの信頼が揺らいだわけではない。

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