イタリア人作家の本を続けて読むことに。実はダブッキさんの作品はまだ読んだことがなくて、どれから読もうかと迷っていたが、帯にある「内面の旅行記」という言葉に惹かれてこの作品を手に取った。
インドは訪れたい国のひとつである。出来れば若い頃に行って「世界観が変わった」なんて感想を言ってみたかった。そのセリフを言いたいがためにインドに行った人もいるんじゃないかしら。世界観なんて実は数日旅行に行ったくらいで変わるはずがないのに。少しだけインドの奔放さと泥臭さに驚く程度のものではないのか。なんて、行ったことがないくせに、何も言えないよなぁ。
失踪した友人を探すために、イタリア人の「僕」はインドを巡る。ボンベイ、マドラス、ゴアをまるで旅をするかのように。イタリア人(欧米人)から見たインドも、私たち東洋人が見るインドとそう違わない印象なんだと感じた。けれど、イタリア人はやっぱりキザな印象だ。
行方不明の友人を探すミステリーでありながらも、主人公はあまり切羽詰まっていない。見つからなくてもそれはそれでオッケーみたいなところがある。そのからくりは最後まで読むと明らかになるのだが…。
ダブッキさんの独特の世界観に引き込まれる。幻想的で魅惑的、夢の中を彷徨っているような感覚になった。須賀敦子さんの訳もこの雰囲気を存分に盛り上げているように思う。それにしても、作中に出てきた「猿のような生き物を背負った少年」の佇まいがなんとも不気味で忘れられない。