書に耽る猿たち

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『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン|ストーリーもさることながら、魅力はやはり登場人物たち

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ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン 東野さやか/訳 ★

早川書房[ハヤカワ・ミステリ文庫] 2022.11.2読了

 

の『ストーンサークルの殺人』から始まる〈ワシントン・ポー〉シリーズは既に邦訳が3巻まで刊行されており、どれも好評だ。ようやく第1巻を読んだが、売れていることがよくわかる!最初から最後まで、かたときもだれることなく抜群に楽しめた。さすがゴールド・ダガー賞を受賞した作品だ(とはいえ、マイケル・ロボサム著の受賞作は私にはピンと来なかったからダガー賞=満足ではないけれど)。

もそもストーンサークルってあまり聞きなれないが、石の遺跡のこと。日本にもあるが、世界でみるとイギリスに一番多く存在するようだ。イギリス・カンブリア州で、ストーンサークルで高齢男性の焼死体が次々と発見されるという連続殺人事件が起こる。

シントン・ポーは過去に起きたある事件のせいで停職扱いになり田舎暮らしをしていたが、被害者の身体にポーの名前が切り刻まれていたことから、停職が解かれ現場に戻るよう指示を受ける。嫌々ながらも、刑事の血が騒ぎ捜査に乗り出す。

とつ疑惑を解決してもまた新たな謎やからくりが生まれて飽きさせない。忘れかけていた伏線回収があるべきところでなされている。猟奇的で残忍な殺害描写には目を覆いたくなるし、その場面を読んでいる時は本当に吐き気を催しそうになったけれど、これが作品の引き締めになるしポーの行動の原動力ともなるのだろう。

生や過去に影があり、弱き者のためには手段を厭わない主人公ポーの魅力もさることながら、小説の中で絶大な魅力を放っているのは、頭脳明晰な相棒ティリー・ブラッドショーだろう。ぶきっちょだけど人間想いの2人の友情が育まれる様は読んでいて好ましい。ティリーに比べると存在感は薄いが、スティファニー・フリン警部も味わい深い。今後ポーとどのような関係になるのかが気になる。

はり英国の小説は肌に合う。本格推理のストーリーテリングもさることながら、文学性も優れており読んでいて満足できる。ずっと話題になっていたのに、なんでもっと早く読まなかったのかと思うと悔やまれるが、これからも続編を読めることだし良しとしよう。