書に耽る猿たち

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『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン|ポー、大変なことになった

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『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン 東野さやか/訳

早川書房[早川文庫] 2022.12.29読了

 

シントン・ポーシリーズの第2作である。先月『ストーンサークルの殺人』を読み、とてもおもしろかったからあまり時間をかけずに続編を。イモレーション・マンのことにも触れられているし、前回の事件からわずか1ヶ月後の設定である。今の小説って、最初から読まないと結構辛いものがあるかも。昔のシリーズものは一話完結型でどれを取り出して読んでもOKなイメージがあるんだけど。

 

「ポー、大変なことになった」

誰かから電話がかかってくるたびに、ポーはこのセリフを聞くことになる。何度も、何度も。

 

ーが6年前に関わった事件で新たな展開があった。娘エリザベスを殺害し死体を隠匿させた罪で服役していたジャレド・キートンだったが、今となってエリザベスが生きた姿で現れた。DNA鑑定でも本人に間違いない。ポーは、無実の男を有罪判決にしてしまったかもしれない。窮地に立たされるポー。

才カリスマシェフ、ジャレド・キートンは、三ツ星レストランの経営者だ。サイコパスである彼は本当に無罪なのか?キートンとポーの勝負の行方はどうなるのかー。息詰まる展開でハラハラしっぱなし、とても読み応えのあるミステリーだった。

棒のブラッドショーが登場する場面は「待ってました!」とわくわくする。こんなにも小説で待ち遠しいキャラクターって珍しい。また、病理学者のエステル・ドイルもまた魅力的だ。死体安置室で、死んだ老女の足にペディキュアを塗ったり、平然と血を抜いたりと感情を一切見せない姿。もしかしたらポーは、フリン警部よりもエステルとどうにかなるのかな。

転三転するおもしろさが病みつきになる。今回の作品は暴風雨ウェンディが良い味を出していた。事件を解決するまでの2週間あまり、ポーもまた天気を気にし、クライマックスではしっかりと雨が降りしきる。作中で「二重思考」を試みるポーは、好きな小説としてジョージ・オーウェル著『一九八四年』を挙げていた。また読みたくなるよなぁ。

年、ハヤカワ文庫でこのシリーズの作品が一番売れたというのも頷ける。終わり方もまた続編に繋がる期待感いっぱいで、次の『キュレーターの殺人』も早めに読まなくては。

内最後の投稿となります。私のつたない読書ブログにお越しいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。世に、書に耽る猿たちが増えますように。

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