書に耽る猿たち

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『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン|エンタメ感増し増しの作品に

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『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳

早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2023.10.1読了

 

リーズ3作めとなる。年1くらいで自分の好きな海外シリーズがコンスタントに翻訳されて読めることは本当に嬉しい限りだ。このシリーズに限らないけれど、作者と同時代に生きてリアルタイムで読めるのは素晴らしいこと。

 

回の殺人クラブが調査対象にしたのは、人気報道番組で10年ほど前にサブキャスターを務めていたペサニー・ウェイツ殺人事件だ。ある詐欺事件を調べていた最中に彼女は車ごと海に転落し、遺体は上がっていないままの未解決事件である。この事件だけでなく、同時進行でエリザベスが脅迫されるなど、波乱の展開に息もつかせぬほど。

 

ナ巡査然り、クリス主任警部然り、警察が主役ではないのに、警察の面々がこんなに魅力あふれる小説があるだろうか?一般市民が探偵もどきをする場合は警察は敵対してることのほうが多いが、この作品では協力体制がものすごい。しかもプライベートにまで乱入する。

 

ーパーズ・チェイスのメンバーはみな70代を超えているのに、この気力、体力、精神的な若さ。こんな風に歳をとって楽しくいられるならば、歳を重ねるのも悪くないと思わされる。今回の主役は、軽快な日記でお馴染みのジョイスだろう。それにしてもこの歳でみんなに恋愛云々が生まれるとは、ちょっと出来過ぎ感はあるけれど…。

 

ステリというよりもエンタメ的要素が強くなっているのではないか?と思っていたら、解説者も「娯楽性がより一層強まっている」と述べていた。ドラマなどで映像化したら抜群におもしろいだろうなと感じる。

 

までの2作同様にとてもおもしろく読めた。ただ、このシリーズだけでなく、 C.W.クレイブン著「ワシントン・ポー」シリーズ、ホリー・ジャクソン著『自由研究には向かない殺人』で始まるピップのシリーズなども、最初から読まないと展開がわかりづらい。というか、途中から読んでもおもしろさが半減してしまう。となると、クリスティー作品がどこから読んでもおもしろくて、わかりにくさがないというのがいかにすごいのかがわかる。

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