書に耽る猿たち

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『ホール』ピョン・ヘヨン|生身の生きた人間のあたたかさに惹かれるとき

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『ホール』ピョン・ヘヨン(片惠英) カン・バンファ(姜芳華)/訳

書肆侃侃房 2025.08.07読了

 

覚めたときに見えたのは病院の天井だった。どうやら主人公オギは妻とドライブに出かけて大きな事故にあってしまったらしい。長らくの闘病のうえようやく意識が戻ってきた。しかし最初のうちは記憶が全くない。妻が亡くなってしまったことに気付いてから、少しづつ状況がわかりはじめる。浮かび上がる過去、孤独、妻の真意、義母との関係…、これらがミステリータッチで不穏なまでにイヤミスらしく描かれている。

 

味深かったのは、何も発せず何もできないオギが、以前とは全く異なるものに魅了されていったことだ。本来は華奢な女性が好みだったのに、たるんでぶくぶく太ったヘルパーさんに惹かれている自分に悲しみが込み上げる。魅惑的な異性の身体を好むというよりも、生身の生きた人間のにおいに興奮していた。

 

うに、人間の身体的側面において基本的にあり得るものが揃ってはじめて人の好みというのは生まれるものなのだ。身体的に何かが欠けていると、もう誰か相手がいる、人間としてのあたたかさそれだけで惹かれてしまうということなのだろう。

 

しぶりの韓国文学。文学だけでなく、映画やドラマも含めてドラマティックでサスペンスフルな展開はやはり健在である。演技力の高い韓国俳優さんが演じている姿が想像できる。シャーリー・ジャクスン賞は、ジャクスンの功績を讃えて2007年にアメリカで創設された文学賞らしいが、調べてみると邦訳されているものはほとんどない。日本人では小川洋子さんと鈴木光司さんが過去に受賞されている。

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