書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『童の神』今村翔吾/エンタメ全開の歴史小説

f:id:honzaru:20201002084508j:image

『童の神』今村翔吾

ハルキ文庫 2020.10.2読了

 

163回直木賞馳星周さんの『少年と犬』が受賞となったが、有力候補と言われていたのは今村翔吾さんの『じんかん』である。選考当時からこの『じんかん』気になっていたのだが、読んだことのない作家さんだからまずは文庫本にしようと思い、本作を選ぶ。どうやらこの『童の神』も過去に直木賞候補になったようだ。

平安時代。戦国時代や江戸時代は人気もあるし題材になりやすいけれど、なかなか「泣くよ鶯(794年)」の時代の話はピンと来ない。安倍晴明(あべのせいめい)が出てきたところで、知っている人だと一安心。終わりの方には藤原道長も。

んの話だかピンと来ないのは、私がこの時代のことに疎いからだろう。酒呑童子(しゅてんどうじ)が登場するところで、どうやらこれはお伽話を元にした作品なのだとわかる。鬼を引き連れていく話だったかな。

がどんどん展開して飛び火するかのようだ。好きな人はハマるのだろうけれど、私としてはあまりのめり込まなかった。おそらく私の知識不足もあるが、エンタメ感溢れた歴史小説に違和感を感じたからかもしれない。小説は自由に書いていいはずなのに、歴史物は緻密でずっしり重たくあるべきだと、勝手に傲慢に思う自分がいる。

けど、直木賞候補に2度も選ばれるくらいだから、世間では評価されているんだろうなぁ。もっと柔らかい頭があればきっと良さがわかったのかもしれない。著者の今村さんによると、このシリーズはあと2作続くようだ。

えば時代モノは久しぶりだ。貪るように読んでいた時期もあったが、ここ数年は遠のいている。司馬遼太郎さんや吉川英治さんの本を腰を据えてじっくりと読みたくなってきた。