書に耽る猿たち

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『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』三上延|実在の本にまつわる柔らかな謎解き

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ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』三上延

KADOKAWAメディアワークス文庫] 2022.6.4読了

 

三上延さんの『同潤会代官山アパートメント』を読んだ。その時に気軽に読めるものを欲していたせいか、柔らかな文体に気分をほぐされ、思いの外楽しい読書時間となった。

者登録をさせていただいているedwalkさんともりっちゃん (id:moricchan24)さんが同著者のビブリアシリーズをおすすめしてくれた。ベストセラーで有名すぎる本なので今更感があるとは思うけれど、私は初読みだ。

潔癖症なわけではないが、私はほとんどの本を新刊書店で手に入れる。綺麗な本を手にしてできれば1番初めに本の頁を捲りたいという欲求がある。ピンと張り詰めた紙面が好き。もちろん廃刊になっているなどで手に入れられない本はこの限りではない。古本を買うか滅多にないけど図書館で借りるかする。一応今のところ、最低限本を買うお金はあるのでこれからも新刊を買うとは思うけれど、この作品を読んで、古本も味がありその本に秘められた物語があっていいのもだなぁと思えた。

鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」の店主栞子さんとアルバイトの五浦大輔が、店に舞い込んでくる本やお客さんの謎を紐解くストーリーである。語り手は大輔。タイトルに「事件簿」とついているが、人が死んだり血が流れたりはしない。日常の謎、とりわけ本にまつわる謎や秘密が柔らかなタッチで優しく書かれている。

がいいって、実在の本について書かれていること。夏目漱石著『それから』に始まり、章ごとに一冊の本にまつわるエピソードが連なっている。登場する本について知りたいと思い読んでみたくなるのは本好きの心理だろう。まだ未読の小山清さんの作品は読んでみたい。それから、鎌倉文学館には絶対行こうと思った。

が好きな人にとってはたまらない作品である。しかしメディアワークス文庫を買うとは思わなかった。文庫書き下ろしだから(そういえば単行本で見たことがない)巻末に解説はないが解説がなくても書かれている内容は全て理解できる。想像しているラノベよりも純文学よりな印象を持った。そもそもラノベ大義があいまいではあるけれど。

らりと軽く読めるものを欲している時にはちょうど良い。続編も数冊あるし新シリーズも刊行されているようだ。ゆっくりと続きを読んでいこうと思う。

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