『嘘の木』フランシス・ハーディング 児玉敦子/訳
フランシス・ハーディングさんの小説は前から気になっていた。児童文学のようだからちょっと手を出しにくかったのだが、この本が文庫になっていたのでようやく読んでみた。帯には宮部みゆきさんにとって今年(当時2017年)のベスト1と書かれていて、こりゃ期待してしまう。
久しぶりに日常を忘れるようながっつりファンタジーを読んだ。この物語の主人公フェイスはまだ幼い女の子だから、おとぎの国に冒険をしているようで、絵画のようにもやがかかったメルヘンチックな色彩が私の頭の中に映像として帯びていた。
フェイスの父親サンダリーは有名な博物学者である。しかし、不正を疑われたために隠れ蓑として家族で小さな島に移り住む。しかし、そこで謎の死を遂げてしまう。本当に自殺なのか疑問を持ったフェイスは父の死の真相を解明し、何より父親の汚名を返上しようとする。敬愛する大好きな父親のためにー。そして、嘘を養分として育つ不思議な「嘘の木」とは一体。
何より子供にはまっすぐな心がある。こわ〜い子供はスティーヴン・ミルハウザー著『エドウィン・マルハウス』やヘンリー・ジェイムズ著『ねじの回転』でお目にかかれるけれど(それはそれで不気味なのになかなかおもしろい)、子どもは基本的には純真無垢なもの。けなげに立ち向かい、成長していく姿に胸を打たれる。大人になるにつれ置き去りにしてしまう「罪悪感」や「相手の気持ちになること」を思い出した。
大好きなエンデ著『はてしない物語』やJ.K.ローリング著『ハリー・ポッターシリーズ』を読み返したくなってきた。本を好きになったきっかけの一つに、やはり小さい頃に読んだファンタジーは外せない。いや、これらの本をちゃんと読んだのは私は大人になってからだ。児童文学はあなどれない。