書に耽る猿たち

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『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』S・J・ベネット|愛すべき国民の母が名探偵

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エリザベス女王の事件簿 S・J・ベネット 芹澤恵/訳 ★

KADOKAWA[角川文庫] 2022.9.25読了

 

界で1番キュートで、おしゃれで、慎ましくかつ知的な女性はエリザベス女王で間違いないと思う。つやつやの肌、キラキラした目、全身から光り輝く姿。英国王室の女王に向かってこんなことを言うのは失礼かもしれないけど、あんなにかわいいおばあちゃんはいない。ウィット溢れる発言が醸し出す知性、生涯を国民のために捧げた素晴らしい人間性。一般参列や国葬をメディアで拝見してわかるように、英国民にとっては本当に「母」だったのだ。

んなエリザベス女王が主役になったこの作品。過去にもエリザベス女王が登場している小説は多くある(探偵ものもそうでないものも)ようだけど、この作品では女王が名探偵役なんて。これは読まずにいられない。もちろん女王陛下たる方が出歩いて色々調査をするわけにはいかないから、とびっきりの相棒がいたりもする。

ィンザー城での晩餐会に招かれていた若きロシア人ピアニストが殺害され、それを解明していくストーリーで、それ自体もおもしろいのだが、私はそれよりもむしろ、英国女王陛下がいかに生活し、毎日何を考えてどうやって国民の象徴となり生きているのかが興味深かった。もちろん、実際は全てがこの通りではないだろうけど。

コーギーたちとたわむれたり、大好きな乗馬をしたり。忙しい業務をこなしながらも、ゆっくりと蜂蜜入り紅茶を飲む姿、衣装選びに惜しみなく時間を使う場面。

物事を察知すること、なにかが「おかしい」と気づくこと。その理由を突き止めること。こんがらかった謎を解き明かしていくこと。こういうことにかけて女王はちょっとした天才だった。(125 頁)

の作品で女王はこんな風に言われている。でもたぶん、実際のエリザベス女王もこれに近い人だったんだと思う。そうでないと、70年もの間、英国という由緒ある国の女王を務められたはずがない。

編もあるようで、邦訳されることを心待ちにしたい。英国王室に興味がある方は是非読んでみて欲しい。実はこの小説とは別に、エリザベス女王のことが書かれたノンフィクション本も手に入れたので、それも近いうちに読むつもりだ。