書に耽る猿たち

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『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン|ダイヤモンドの行方は

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『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳 ★

早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2022.12.15読了

 

いに木曜殺人クラブの続編が出た!シリーズ一作目がとてもおもしろかったので、楽しみにしていた。とは言っても、読んだのが1年以上前だから謎解き要素は実はあんまり覚えてない。ミステリー小説って、バックグラウンドみたいなもののほうが意外と記憶に残る気がする。登場人物たちの背景やら、仲間との会話やら、その舞台となる場所から立ち昇る空気やら。

はり、謎だらけだったエリザベスの過去から物語が展開していく。エリザベスと昔関わりがあった男性にダイヤモンド盗難の容疑がかけられ、助けを請われる。一方で、探偵クラブのメンバーのイブラハムが暴行を受ける。高齢の探偵もどきのメンバーの血がまたしても騒ぐ!

の作品の構造と語り口は読者の心を鷲掴みにする。今回もまたジョイスの手記がスパイスとなっている。そして探偵クラブに所属する70代の男女4人の行動と思考が魅力的なこと。エリザベスはもちろん、おせっかいだけどかわいらしいジョイス、男らしく頼りになるロン、朴訥だけど深い優しさを持つイブラハム。放っておけないのが、クラブのメンバーではないけど建設業者のボグダン!彼は一体何者なんだろう。

らのウィットに富んだ会話がもうセンスの塊!人生経験に裏打ちされた審美眼。それから、この作品に取り憑かれるのは、クラブのメンバーも含めてみんながみんな100%信用できないところのんじゃないだろうか。「いや、待てよ。もしかして彼(彼女)が…?」なんて疑うシーンが一度や二度ではない。

作目は古典的な英国ミステリーだったのに対して今回の作品は現代ものを読んでいる感じがした。70代の男女がこんなにも行動的なわけないよな〜と思いながらも「やったれ!」と応援している自分に気付く。こんな仲間がいて、こんなワクワクがあって、こんな老後だったら刺激的で楽しいだろうなぁ。

もそも邦訳される(そもそも本国で人気がないと邦訳されないと思うし)英国作品はたいてい好きなのだけれど、現代英国ミステリーのなかでは飛び抜けて好きなシリーズだ。ミス・マープル作品が好きな方はどハマりだと思う。未読の方は是非シリーズ1作目からどうぞ。

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