書に耽る猿たち

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『彼岸の花嫁』ヤンシィー・チュウ|霊婚、または中国社会独自の文化や習わし

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『彼岸の花嫁』ヤンシィー・チュウ 圷香織/訳

東京創元社創元推理文庫] 2023.1.7読了

 

レーシアにある街、マラッカが出てきた!マレーシアは7〜8年前に旅行で訪れて、都市と田舎が合体したような雰囲気と、安価で美味しい料理、多様な文化の融合、なんとも言えない落ち着きがあり、居心地が良くて肌に合う国だった。

プショナルツアーで港町・マラッカにも行った。まだまだ発展途上で、トイレの水洗もあまりよくはなかったし街も雑然としていたけど、溢れる自然とオレンジ色の建物が織りなす景色が魅力的だった。両国行ってみた結果、人気のあるシンガポールよりも私はマレーシアの方が好きだ。

の『彼岸の花嫁』はマラヤ(独立前のマレーシア)が舞台となる。マレーシアの物語なんて初めてだったから、新鮮な気分で、また旅行のとこを思い出しながら主人公リーランと共に楽しく読めた。

霊と結婚するなんていかにも「異世界ファンタジー」感満載で普段はあまり手をつけないのだけれど、期待していなかったこともありなかなかおもしろかった。「死後の世界」や「冥の原」、あげくには「ヒトガタ」なる紙でできた召使いのようなものが出てきたり。入り組んだ仕組みながらもしっかりと話がうまく繋がっている。

者のあとがきによると、冥婚(霊との結婚、あるいは霊同士の結婚の民族文化)は、鎮魂や祟りを避ける目的で行われ、祖先崇拝の考えが元になっているらしい。中国文学にも出てくるが、本土以外の東南アジアや台湾に多いそうだ。他にも目新しい中国文学独自の習わしや文化があり、興味深い。最近中国文学を読んでいないので、今年は多く読もうかな。

婚適齢期の若い女性が主人公の恋愛ファンタジーなのに、奥行きがあり大人でものめり込んでしまう。単純に物語世界を楽しめ、ファンタジーならではの没頭する感覚を味わえる。ちょっと少女漫画風ではあるかもしれない。Netflixでドラマ配信もあったようで、映像にするとどんな風に仕上がっているのかも興味深い。