書に耽る猿たち

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『ローラ・フェイとの最後の会話』トマス・H・クック|父親と息子の確執、記憶のたぐり寄せ

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『ローラ・フェイとの最後の会話』トマス・H・クック 村松潔/訳

早川書房[ハヤカワ・ミステリ文庫] 2023.7.19読了

 

り手のルークは、自身とその家族を悲しみの底に突き落とす原因となったローラ・フェイと再会しお酒を飲み交わすことになった。事件が起こってから20年後、しがない学者になったルークだったが、彼女と話をしていくうちに、悲劇を生んだかつての謎が雪解けのように明かされていく。過去の出来事と心情がフラッシュバックする巧みな構成に読み手は翻弄される。

 

前読んだ『緋色の記憶』同様に、記憶をたぐるミステリーでぞくぞく感がたまらなかった。誰が事件を引き起こしたか、誰が真犯人なのか、という謎解きよりも、どうしてこんな人生になったのか、そして父親と息子との確執について深く考えさせられる。当時は父親と気持ちを通じ合わせることができなかったルークが、時を経てどう折り合いをつけるのか。

 

ックは記憶・回想の作家だと言われている。2作読んで、なるほどと頷ける。前作ほどの衝撃はなかったものの、ざわりとした鳥肌ものの読書体験を味わえ、これが病みつきになる。続けて読もうとまでは思わない(なんだかもったいないのだ)が、時間をおいてまたクックの小説を読むつもりだ。

 

ールデンウイークに、初めてクックの『緋色の記憶』を読んだ。北海道旅行のお供にしていた本だ。今回も広島旅行のお供に選んで持って行ったが、結局旅行中に進んだのは30頁ほどだけ。本が読みたくても読めないほど、旅の道中は日常にはない景色を見て、貴重な世界を堪能した。はてなブログでお世話になっているedwalkさんから教えてもらった広島ご当地グルメも食べられて満足できた。さてさて、また日常に戻って、読書に耽ることにしよう。

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