『恐るべき太陽』ミシェル・ビュッシ 平岡敦/訳
クリスティーへの挑戦作なんて帯に書かれていたら、クリスティー好き、英国ミステリ好きとしては放っておけなくなる(これはフランス人作家の作品だけれど)。表紙のイラストも気になり手に取ってみた。
私はポール・ゴーギャンの絵画が大好きだ。ゴッホよりも好き。晩年タヒチに移り住んだ彼の描くその土地のふくよかな女性を描いた絵画を観ていると、なんとも言えない哀愁と朗らかさに包まれる。そして情熱が半端ない。この作品の舞台がその南国タヒチの島である。
フランスのベストセラー作家が、島の創作アトリエに募った作家志望の5人の参加者たち。そのアトリエの名前がタイトルの「恐るべき太陽」だ。作家は謎の言葉を残して失踪し、参加者も死体となり発見される。おぉ!クローズドサークルものか!
集まった5人のうちの2人と、同乗参加した2名がメインの語り手となる。小説の章のタイトルや日記として入れ替わり立ち替わり語られているが、これが誰の視点で書いたものやら、かなりのやっかいさ。しかも「信用ならない語り手」なわけで、読み進めながらも違和感ありありだった。
この作品の感想を読むと「まんまと騙された」「伏線にやられた」だの書かれているが、そもそも私にとってはついていくことが精一杯。常に半信半疑がないまぜの読書だったので、騙されたというに及びない、最後までクエスチョンマークざんまいだった。
本当は「騙された!」を味わいたかったのに、私の読解力のなさが故に少し残念さが残る。ストーリー仕立てがしっかりしているミステリでも個人によって合う合わないがあるんだよなぁ。それでも、離島ならではの緊迫感、タヒチの大らかな自然と遺跡などを読むと、やっぱり死ぬまでに一度はこの土地に行きたくなる。
ミシェル・ビュッシさんの小説を読むのは初めてだったが、どうやらフランスではミステリの巨匠として名を馳せているらしい。他の作品を読んでみないと好みに合うかはまだわからない。ミシェル、、、といえばミシェル・ウエルベックの『滅ぼす』をそろそろ読まないと。積んでいるからな。