書に耽る猿たち

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『マルナータ 不幸を呼ぶ子』ベアトリーチェ・サルヴィオーニ|読んでいる間守られている感がある

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『マルナータ 不幸を呼ぶ子』ベアトリーチェ・サルヴィオーニ 関口英子/訳

河出書房新社 2023.10.8読了

 

中学生の頃、学年に2〜3人は悪ガキ男子がいた。どうしてか決まって彼らは見た目も良いことが多くて人気があった。そして女子も同じ。周りの友達よりも抜きん出て悪そうで、突っ張っているけどなんかカッコよくて、私もどこかで憧れるような気持ちを持っていた。そういう子達と付き合うのはあんまり良くないと大人たちは思っていたけれど。

 

説の語り手である12歳のフランチェスカはお嬢様のように、品行方正に育てられていた。しかしフランチェスカは過去の弟の死に対する自分の想いに罪悪感を持っていた。近所に住むマルナータ(不幸を呼ぶ子、の意)と呼ばれる女の子のことがいつも気になっていた。

 

のマルナータと呼ばれる女の子は、名前をマッダレーナという。盗みも平気でするし、男の子を従えて自由奔放に生きていた。マッダレーナと付き合うと悪いことが起きるんだと、みんなからは悪魔の子だと恐れられていた。正反対と言っても良いフランチェスカとマッダレーナは、いつしか友達になる。

 

2人の友情と、大人の女になるとはどういうことかがのびやかに書かれている。多くの人は大人になるにつれて、分かり合えるのは男女(異性)同士だと思い込んでいるが、子供の頃は同性同士が絶対だった。好きな芸能人の話を共有するのも、休み時間や学校帰りに遊ぶのも同性。異性とはなんにも分かり合えなかったように思う。読みながらそんなことを思い出した。

 

ッダレーナの兄エルネストは「言葉というのはね、とても大切なんだ。口にする前にじっくり考えないといけない。でないと危険だ」といつも言っていた。マッダレーナは言葉は危険であると同時に「力」があると信じる。本当に、マッダレーナの言葉には、人を惹きつけ真実を気付かせてくれる。

 

 

店に新刊として平積みされていた。知らない作家で半信半疑だったが、訳者が関口英子さんだと知り迷わず手に取った。28歳で書き上げたとは思えない、豊かで力強く優しい物語だ。読んでいる間、安心感というか何かに守られている感がずっとあった。書かれている内容は痛々しいのに、不思議と心が落ち着くような。