書に耽る猿たち

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『ルポ路上生活』國友公司|太ったホームレスがいるんです

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『ルポ路上生活』國友公司

彩図社 2023.11.20読了

 

む場所の近くに、散歩やジョギングが出来るような道があるかどうかは私にとって結構大きなポイントになる。できれば信号を渡る回数が少なく、なるべく見晴らしがいいコースが良い。そうでないと、家を出るのにおっくうになる。今の住居に移り住み、最初にコースの散策をした時(夜遅い時間)に、何も知らずに川沿い(ちょうど高架下)の奥の方を歩いたら、ホームレスの家(家というかテント)がたくさん並んでいるエリアに入った。何をされるわけでもないと思うが、夜間で照明もほとんどなく、暗くて静けさが不気味だったから少し怖い思いをした。

 

隣の人であれば知っていただろうが、その界隈はホームレスの人たちが暗くなってからテントや寝床を広げる場所であった。独特の雰囲気がありやや不気味。目をそらせてしまう。でも、彼らはどうやって生活し何を感じて生きているのだろう。この作者國友さんと同じような疑問を私も抱いたのである。

 

都心部にあるホームレス居住地・新宿、上野、隅田川や荒川河川敷。これらの地を中心としたホームレスに密着した、というか本人自らホームレスになって体験したルポである。読みやすくてあっという間に読み終えた。

 

ームレスの方にもそれぞれコミュニティがあり、その中で上下関係もある。目立ちたい人がいればおとなしくひっそり暮らしている人もいる。普通の暮らしをしている人と何ら変わらないのだと思った。読む前は、辛くなったり苦しくなるかと思ったのに、全くそんな感情にならなかった。

 

ームレスの人は、物乞いのように生活に困っている人だというイメージがあったが、今ではそういう人ばかりではない(もはや少数であること)ことに驚いた。年金をもらっている人もいれば、生活できるレベルで普通に稼いでいる人もいる。炊き出しなんて食べ放題のようなもの。だって太ったホームレスがいるくらいなんだから。なんだかホームレスの概念が変わっているようだ。

 

者の國友さんは、『ルポ西成』や『ルポ歌舞伎町』を書いている方だった。この路上生活を体験したように、西成や歌舞伎町でも自らその世界に足を踏み入れていったのだろう。たとえ数ヶ月であろうとも、日常を捨てて生きた生の声には真実がある。家に戻り普通の生活に戻った時、同僚から「ホームレスでいた時の顔つきは感覚が研ぎ澄まされていた」と言われたそうだ。生きるとは本当はそういうことなのかもしれない。