書に耽る猿たち

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『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』ガブリエル・ゼヴィン|愛おしい友愛の物語

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『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』ガブリエル・ゼヴィン 池田真紀子/訳 ★

早川書房 2023.11.19読了

 

は今まで生きてきて、ゲームに関わった時間はほんの僅かしかない。小学生の頃に姉妹で一緒にゲームボーイを持っていたのと、友達の家でファミコンやプレステで多少遊んだりしたくらい。ゲーセンには5年に1度行けばいい方だし、話題の作品も名前しか知らない。

 

からこの小説を読んでも楽しめるか自信がなかった。それでも、あまりにも評判が良いのと、本屋大賞翻訳部門を受賞作『書店主フィクリーのものがたり』(まだ読んでいない)を書いている方だったから手にしてみた。表紙に葛飾北斎の絵もあるから日本も関わっているのかなと。確かにゲーム・漫画といえば日本よな!

 

ーム作りなんて、なにをどうしたらいいのか、そもそもプログラミングすらわからない。何しろExcelを使って式を構築することすらおっくうなのに。それなのに、セイディとサムのゲーム作りの過程は、読んでいてぞくぞく!わくわく!が止まらない。やはり何かを一から作り出すクリエイティブな仕事は期待いっぱいで希望しかない。ゲーマーには特にたまらない作品だろうと思う。

 

ームに親しまない私でもこんなに楽しめたのは、この作品が小説としてとても優れているからだ。ゲームの世界が舞台ではあるが、根底にあるのは「友情」である。セイディとサムの、淡くも狂おしくもある、愛おしい友愛の物語だ。まずなんといっても2人の出会いのシーンが良い。病院の待合室でゲームをしながらシュールな会話をする。ゲームとは「スーパーマリオブラザーズ」。ほら、日本のゲームの象徴!日本人がこれを読んで嬉しくないはずはない。

 

イディとマークスの関係に気付いたときのサムの気持ちを思うと、切なくて苦しくてぎゅうっとなってしまう。これに近い感情って誰しもが経験したんじゃないかな。私は、子供の頃は男女の友情は「ある」と思っていた。10代後半から20代にかけては、男女間の友情は「ない」に変わった。しかし今はどうかというと、男女間の友情、そして親友関係は「確実にある」と確信している。

 

ームは、無限にやり直しがきく世界。人生も、それと同じように、自分次第でやり直せる。そう思って生きていきたい。

 

れにしても、このタイトル『トゥモロー・アンド・トゥモロー・・・』って、タイトルとしてカタカナで表記しなくてはいけないのかなぁ。英語の綴りのままではダメだという決まりがあるのかしら。この作品だけではないけれど、カタカナで長ったらしく書くのはなんだかなぁと思う。それでもこのジャケットはゲームの世界観を表していて、カタカナもRPGっぽくてなかなか良くできている。本屋大賞の『書店主フィクリー~』も読もう。