書に耽る猿たち

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『変な家』雨穴|間取りを見るのは生活を見ること|今売れている本を読むこと

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『変な家』雨穴(うけつ)

飛鳥新社 2024.02.07読了

 

年から、どんな書店に行っても目立つところに積み上げられているから、確かに気にはなっていた。けれど、自分が読みたいジャンルの本じゃないと思っていた。それでも、文庫になったからついつい…。朝この本を鞄に入れ、行きの通勤電車、珈琲を飲みながらの朝読書、そしてランチをしながらの読書、それでもう読み終えてしまった(いつも2冊持ち歩いても結局読めないから1冊しか持たなかったが…今回ばかりは後悔気味)。

 

可解な間取りをめぐり推理をしていくミステリータッチの小説である。私は曲がりなりにも一応不動産系の会社に勤務しているので、かなりの頻度で家の図面を見る。だから表紙の間取りを見てすぐに違和感アリアリ。そもそも家の間取りって見ているだけで楽しいよなぁ。

 

れは文学ではなくドキュメンタリーに近い。インタビュー形式の頁も多く映像化に向いている。次々と仄めかされる疑惑と推理から目が離せなくなり、あっという間に読み終えてしまう人がほとんどだろう。正直、明かされる真実よりも、間取り図を見てあれやこれやの推測・議論している過程がおもしろい。あとは、この圧倒的な読みやすさが広く読まれている所以だろう。

 

んせ去年一番売れた小説らしい。最初は、事故物件サイト・大島てるさんが書いたのか(大島さんが覆面作家なのでは?)と思っていたがどうやら違う。雨穴さんは、覆面作家でウェブライター、そしてYouTuber。文学の世界なのに、動画を作る専門家のYouTuberに負けちゃうなんて!でもYouTuberなら、時代の最先端を行くから、何が売れるのかも把握している。この覆面作家というのが、作品の奇妙さと相まって読者の興味をより引き立てているような気もする。

 

分が何を読もうとも一切自由だ。本当は自分が好きな(好きそうな)作品だけを好きな時に読むのが楽しい。だけど、今この時代にどんな本が多く読まれているのかを知ることって結構大事だと思う。自分の趣味嗜好のためとか満足度を高めるという意味ではなく、今を生きるという上で。

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今春、映画にもなるようで全面カバーに包まれた姿がこちら。特典としてこの栞もついていた。背が高そうな人だな、雨穴さん。