書に耽る猿たち

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『新版 思考の整理学』外山滋比古|寝かせる、忘れる、考える

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『新版 思考の整理学』外山滋比古

筑摩書房ちくま文庫] 2024.02.18読了

 

大生、京大生に一番読まれた、とかなんとかの帯を外して、安野光雅さんの素敵なイラストのジャケット姿をパシャリ。ちくま文庫で長らくベストセラーとなっていた『思考の整理学』に、2009年の「東大特別講義」を巻末に収録した新版である。やはり長く読み継がれている本というのは、それなりの理由がある。それが小説であれ、評論であれ、何であれ。

 

とつめの章「グライダー」を読んだだけで、目から鱗が落ちたという感じ。まさに「もっと若いうちに読んでおけばよかった」というキャッチコピーそのまんま。できれば論文を書く学生の時に読むのがベストなんだろうけれど、何歳になって読んでも遅すぎるということはないし、読まずに終わるよりはずっと良い。

 

大生云々という帯やうたい文句があると、何やら難しそうだなと感じてしまう。私もその1人で、だから手を出していなかったのだ。でもそれがなんのその、めちゃくちゃに読みやすかった。やはり、井上ひさしさん曰く、「難しいことをいかに易しく伝えられるか」の代表と言っていいと思う。

 

てが逐一細かく書かれている小説よりも、結局何が言いたかったのだろうと判断を読者に委ねられているような小説の方が気になるし意外と心に残る。これは自分に「考える」隙間があるから。それは学校教育の在り方と少し似ているのかもしれないと思った。なんでもかんでも丁寧に一から教えまくる、詰めまくる、これじゃあせっかくの脳がどんづまりになってしまう。自分で考えさせるくらいの隙間がないと、まさにグライダー人間まっしぐらなんよな。

 

山さんがこの作品で伝えたいポイントは下記の3点だと感じた。

1.何かを思い付いたら、しばらく寝かせてあたためる必要がある

2.思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である

3.知ること、つまり知識を得ることよりも、考えることが大事である

 

こんなブログでさえ、伝えたいのに上手く表現できないから下書きのまましばらく置いておいて、翌朝とか(まさに外山さんの言う朝飯前)に、ふっと言葉が湧いてくるのが「寝かせる」のわかりやすい例えといえるだろう。「忘れる」ことをしないと無駄な知識で頭の中がパンクしてしまう、自然と忘れてもよいものを取捨選択できるようになりたいと思った。例えば読書では、やみくもに本を読むよりも、読んでから自分の言葉で考える時間が大切だと改めて思った。そういう意味では、読書ブログを続ける価値も少しはあるんだなぁとちょっぴり自信にもなった。