書に耽る猿たち

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『村上さんのところ』村上春樹 / 小説のかたち

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村上さんのところ』 村上春樹

新潮文庫  2019.1.26 読了

 

2015年1月~5月の期間限定サイトによる、村上春樹さんとのメールのやりとり。その中から選りすぐった473通が収録されている。

いつもながら村上さんの文章は心地よい。数日前にどっぷり浸かる小説を読んでいたから、お手軽に読めるエッセイ的なものを通勤カバンに入れていた。さらりと読めるのに、伝わってくるメッセージは深い。フジモトマサルさんの動物イラストにもほっこりする。それにしても、小さな子供から84歳の方まで、そして多くの海外の方からメールが届くなんて本当にすごい。「村上主義者」でも、メールを送らない人の方がはるかに多いわけで、村上さんって多くの人の心を動かし力を与えているんだなと改めて感じた。本人に、「偉大な人ですね」と言っても、本人はきっと「普通の人間ですよ。あなたもうまくいくといいですね。」と答えるんだろうな。

小説が好きだからこそ、この回答がとても心に残った。

小説には意味なんてそんなにありません。というか、意味という座標軸でとらえることができないからこそ、小説が有効に機能するのです。意味という座標軸でとらえてしまうと、小説は味気ないつまらないものになってしまいます。物語の足が止まってしまいます。「意味はようわからんけど、なんかおもしろいし、読んだあと腹にたまるんや」(なぜか関西弁になる)というのが僕の考える小説のかたちです(#060 村上春樹の考える「村上春樹の読み方」) 

意味なんて考えずに、読んでいていいんだなと思えた。このブログを始めてから、どんなふうに感想を伝えようか、この本は何が言いたいんだろう、とかそんなことを思いながら読んだりもしていたけど、 読んでいる時間はそんなことを意識しないで、ただ没頭して、読み終わったら率直な感想を綴ることにしよう。