書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『たおやかに輪をえがいて』窪美澄|自分の人生を自信を持って生きたい

f:id:honzaru:20230206003050j:image

『たおやかに輪をえがいて』窪美澄

中央公論新社[中公文庫] 2023.2.6読了

 

分とは立場が異なるのに、どうしてこんなにも共感できるんだろう。絵里子の行動、感情に他のなにものかが入り込む余地がない。おそらく、最初から絵里子の一挙手一投足、感情の全てが一部も省かれることなく描かれているからだ。全てをさらけ出している。

 

分なりにつましく謙虚に生きてきたら、些細なことが生じただけでも拒絶反応が起こる。52歳の絵里子もそうだ。夫が風俗通いをし、一人娘が危険な恋愛に陥っている。しかし何の行動も起こすことができず、自分のなかでやるせない思いをただただ抱える。

 

「お姉ちゃんが考えているより、人間ってもっと不可解なもんなんだよ。お姉ちゃんみたいに、全部が全部、まっすぐ線が引けるように世の中はできてないんだよ」(190頁)

の芙美子からこう言われた。良いか悪いか、正しいか間違いか、そんな風にきっちり線をひこうとするから疲れるのかもしれない。

 

み始めは、絵里子はどうして些細なことでぐちぐち悩んでいるのか、もっと自分の意見を言って堂々としたらいいのに、とモヤっていた。しかし読み終わる頃には気持ちがスカッとして吹っ切れた。絵里子が強く美しくなったからだ。写真家のみなもが言うこの台詞に私自身も身を引き締める思いになった。こういう被写体にならなくては。何歳になっても自分の人生を自信を持って生きたい。

「悩んでても、恥ずかしくても、自分のことを卑下したりしない。私はそういう女の人が撮りたいんだ。みんな真剣で、一生懸命で、自分の人生を生きてる。」(362頁)

 

友の詩織との関係が救われる。大人になってから出来る友達は共通の趣味みたいなものでつながっていることが多いが、子供の頃からの友達は、何かがなくてもただ一緒にいるだけで楽しいし落ち着く。かけがえのない存在を大切にしたい。

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com